ゼロ音波(読み)ゼロおんぱ(その他表記)zero sound

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ゼロ音波」の意味・わかりやすい解説

ゼロ音波
ゼロおんぱ
zero sound

低温のフェルミ液体における音波の1種。 1957年 L.D.ランダウが提唱したフェルミ液体の理論によって,波の振動数が高く,粒子間の衝突がほとんど無視できる場合の音波として理論的にその存在が予言された。通常の音波 (第一音波) は局所的な熱平衡状態を保ちながら振動し,粒子間の衝突による流体力学的圧力復元力とするのに対して,ゼロ音波は準粒子間の相互作用が直接に振動の復元力になっている。低温の液体ヘリウム3でゼロ音波が観測された。音速は第一音波より少し大きい。荷電粒子ではプラズマ振動がゼロ音波にあたり,広義には液体ヘリウム4などの高振動数の音波をもゼロ音波ということがある。

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世界大百科事典(旧版)内のゼロ音波の言及

【音波】より

…このほか超流動状態の液体ヘリウムには第3音波,第4音波と呼ばれる特殊な音波が存在し,前者はヘリウム膜における縦波表面波,後者は微細な粉末の詰まった容器中にある超流動ヘリウムでの音波をいう。また,フェルミ統計に従う粒子からなる液体(フェルミ液という)では,絶対0度付近でその中を伝わる波動をゼロ音波と呼んでいる。超音波【子安 勝】。…

【素励起】より

…構成粒子がフェルミ統計に従う場合は,2個のフェルミ粒子が関与している。例としては,荷電粒子系での電荷の密度の変化に伴うプラズモンplasmon,3Heのように電荷をもたない系での密度変化によるゼロ音波,半導体中などで見られる電子と正孔の束縛状態としての励起子などがある。なお,励起子の場合,その密度を高くした状況,すなわち,高密度励起子の系は,近似的にボース粒子の集団とみなせる。…

※「ゼロ音波」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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