フェルミ液体(読み)フェルミえきたい(英語表記)Fermi liquid

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「フェルミ液体」の意味・わかりやすい解説

フェルミ液体
フェルミえきたい
Fermi liquid

フェルミ統計に従う量子液体。 1956年 L.D.ランダウ液体ヘリウム3をモデルとしたフェルミ液体の現象論を発表した。ヘリウム3はフェルミ統計に従い,低温ではフェルミ縮退する。一方,液体であるから相互作用は相当強い。このような系において,基底状態とこれに続く低い励起状態は,相互作用のないフェルミ気体の一粒子状態と1対1に対応する準粒子の状態で記述できると考える。ただし,準粒子は他の準粒子のつくる平均場の中で運動するので,個々の準粒子のエネルギーは他の準粒子の分布関数に依存する。そのため,フェルミ気体の場合と違って外力により状態が熱平衡状態からずれると,準粒子のエネルギーも他の準粒子の平衡からのずれに比例して変化する。液体ヘリウム3の比熱や帯磁率がフェルミ気体的なふるまいをする半面,その大きさがフェルミ気体と異なるのは,この理論で相互作用の大きさを適当にとることによって説明できる。またゼロ音波の存在も予言された。ヘリウム3とヘリウム4の混合液体にもフェルミ液体論が適用され,実験結果をよく説明している。

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