日本大百科全書(ニッポニカ) 「その男ゾルバ」の意味・わかりやすい解説
その男ゾルバ
そのおとこぞるば
Vios kai Politeia tou Aleksi Zorba
ギリシアの作家カザンザキスの長編小説。1947年刊。原題『アレクシス・ゾルバスの生活と行状』。舞台はクレタ島の海岸。机上の学問しかしたことのない青年が貧鉱の採掘を手がけ、結局失敗する。たまたま現場監督として雇ったゾルバなる素姓(すじょう)の知れない老人が、この青年に真の人間らしさとは何かを教えていく。世界各地を渡り歩いたゾルバの経験談には、作者の哲学ないし人生観が投影され、それがこの小説の骨子となっている。この作品は筋はごく単純だが、発表後ほどなくフランス語に翻訳され、世界的な反響をよんだ。64年にギリシアのカコヤニス監督によって映画化され話題となった。
[森安達也]
『秋山健訳『その男ゾルバ』(『東ヨーロッパの文学』所収・1979・恒文社)』