大学事典 「タウンとガウン」の解説
タウンとガウン
ヨーロッパ中世に団体(ギルド)として誕生した大学は都市に依った。その大学都市には一般市民と,主として他郷からやってきた学徒・大学人という二つの社会集団が共存した。大学人は聖職者身分の一端にあるとして僧衣にならいガウンを着用したことから,やがて「ガウン」で表象されることになった。服装だけでなく,市民と学徒は使用する言葉や生活・文化面,裁判権などにおいても相互に異なるところが多かった。実際,学徒が賃借りする家屋の家賃や食料品の値段などをめぐって,両者の間でしばしば争いが生じた。「大学の発展の歴史はタウン(都市の住民)とガウン(大学人)の争いの歴史である」と言われるように,各地で生じたタウンとガウンの衝突の結果,大学側は概してローマ教皇や国王による有利な調停を得た。そして,そのたびに大学団は種々の特権を獲得し発展していったのである。その後,大学は独自の建物・施設やキャンパスなどを有するようになるが,都市と大学は対立・融和,相互依存の関係をはらみつつ今日に至っている。
著者: 安原義仁
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報