日本大百科全書(ニッポニカ) 「タマシキゴカイ」の意味・わかりやすい解説
タマシキゴカイ
たましきごかい / 玉敷沙蚕
[学] Arenicola brasiliensis
環形動物門多毛綱タマシキゴカイ科に属する海産動物。クロムシ、ドンベイ、チンチロムシなどの地方名がある。陸奥(むつ)湾以南に分布し、干潟の砂泥中にU字形の孔(あな)を掘ってすむ。一方の孔の周囲にうどん玉のような砂の糞(ふん)を盛り上げるので、その所在がすぐわかる。大きなものでは体長30センチメートル、前方の体幅1.5センチメートルになり、後半部はしだいに細くなる。体は17剛毛節からなり、そのうち第7から第17剛毛節の各節には、細かく枝分れした羽状のえらが各1対あって赤い血液が流れている。頭部には触手や目はない。いぼ足は小さいこぶ状で、背足枝に針状剛毛、腹足枝に鉤(かぎ)状剛毛がある。生殖時期は4~9月で、ニワトリの卵くらいの大きさの寒天質の卵塊を底土上に産む。卵塊の中で多くの卵が発育し、体が10節くらいの仔虫(こむし)になってから海中に泳いで出る。瀬戸内方面ではタイやカレイの釣り餌(え)に用いている。近似種のイソタマシキゴカイAbarenicola pacificaは体が19剛毛節で、えらは13対。三重県以北に分布する。
[今島 実]