河川や海流が運んだ土砂が海岸や河口部に堆積してできる。貝やゴカイがすみつき、プランクトンなど有機物を食べることで海水を浄化する働きがある。ハゼやカレイといった魚や、魚を餌とする鳥が集まり、多種多様な生物が生活する場となる。環境省は、干潟1ヘクタール当たり年間約1200万円の経済価値があると試算している。水産庁によると、1998年までの約50年間に、埋め立てにより全国で面積が4割程度減少した。
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河口域や湾の奥部の潮間帯には,川から流れ出た砂泥が堆積し,広く平たんな砂泥地ができる。干潟とは,このような場所が干潮時,海面上に姿を現したものを指す。その成因から,干潟の砂泥は,きわめて豊富な栄養塩類や有機物を含んでいる。それにもかかわらず干潮時には,毎日2回は空気中にさらされるため,酸素が十分に供給され,生物にとって好適な環境をつくっている。
干潟には,ゴカイ類,二枚貝類などが,きわめて豊富にすみつき,コメツキガニなどのスナガニ類も多い。これらの底生生物たちを餌とする鳥類(チドリ,シギ,サギなど)も多く訪れるため,鳥の観察には絶好の場所を提供している。また干潟は,アサリ,バカガイ,シオフキガイなどの貝を求めて,潮干狩りに利用されている。満潮時は冠水するが,このときは底生生物を餌とする多くの魚類が集まり,藻場と同じように,浅海で最も重要な幼稚魚の成育場にもなっている。一方,その立地条件などから,干潟は埋立地として最もねらわれやすく,1978年の環境庁の調査によると,日本の干潟の3分の1は,工業用などに埋め立てられてなくなっている。
1960年代後半の高度成長時代に,工場立地のためなどによって次々と干潟が埋め立てられたため,反公害や自然保護などの住民運動も盛んに行われるようになり,入浜権や環境権なども主張されるようになった。自治体などでは,これらの住民の要求と埋立計画の妥協策として,埋立地の沖側や埋立てで陸地にとり残された海岸の一部に,人工的に干潟を作った。都市周辺の人工干潟には,年とともに底生動物も増加し,多くの野鳥が集まるようになってきているが,客土した土壌の性質や人工干潟の位置,海水の交換などの条件によって,自然の干潟とほぼ同じような生物相になったところから,ひじょうに貧弱な生物相のままのところまである。83年現在,東京湾奥の2ヵ所の野鳥公園,横浜の人工干潟などがあるが,全国で目下計画中のものがいくつか知られている。
執筆者:向井 宏
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千葉県北東部、香郡取(かとりぐん)にあった旧町名(干潟町(まち))。現在は旭市(あさひし)の北部を占める地域。旧町域は下総(しもうさ)台地と九十九里平野北部に位置する。1955年(昭和30)古城(こじょう)、中和(ちゅうわ)、万歳(まんざい)の3村が合併して町制施行。2005年(平成17)、旭市に合併。旧町域は1670年(寛文10)江戸の町人白井次郎右衛門(じろうえもん)によって太平洋へ通じる湖沼椿海(つばきうみ)の干拓工事が完成し、新田集落が発生、「干潟八万石(ひかたはちまんごく)」とよばれた。地名はこれに由来する。幕末には大原幽学(ゆうがく)が長部(ながべ)(村)に定住して、土地改良、耕地整理、協同組合経営などを指導した。大原幽学遺跡は国史跡に指定されており、1988年(昭和63)幽学没後130年祭が催され、1990年(平成2)大原幽学遺跡史跡公園が完成、園内に1996年大原幽学記念館が開館した。農業は養豚に主力が置かれ、大利根(おおとね)用水が通じ、早場米が生産されるほか、キュウリ、トマト、シュンギク、シシトウ、花卉(かき)、イチゴのハウス栽培など多様な作物の生産が行われる。1990~1993年に工業団地も造成された。
[山村順次]
『『干潟町史』(1975・干潟町)』
潮の干満に伴い、周期的に海面下から空気中への露出を繰り返す砂泥底の海岸地形の通称。学術的には潮間帯砂泥底または砂泥性潮間帯といわれる。また単に潮汐平底(ちょうせきへいてい)とよぶこともある。干潟は地形的位置により、河川の河口部に流路に沿ってできる河口干潟、河口部より海側に前浜として広がる前浜干潟、河口や海から入り込んだ潟や入り江にできる潟湖干潟(せきこひがた)に区別されることもある。干潟の後背部には、温帯ではヨシ原、熱帯ではマングローブ林などの植物群落からなる湿地が広がる。
干潟には、ゴカイ類、カニ類、二枚貝類、巻き貝類といった底生動物が豊富に生息し、これを餌(えさ)にする鳥類や魚類が来遊する。干潟の底生動物が餌としているのは、冠水時に干潟を覆う水塊中の有機物粒子や植物プランクトンであったり、干潟表面に沈積する有機物や干潟表面に生息するケイソウ類などの単細胞藻類である。
干潟では、潮の干満により、河川や海から運ばれてきた有機物が沈積しやすく、沈積した有機物はバクテリアや底生動物によって分解される。これにより、干潟は、海水浄化の機能が大きいとされる。しかし都市近郊の干潟では、富栄養化による過度の有機物堆積(たいせき)により、生物の生息が困難な還元的状態になりやすい。本来、生物生産の高い干潟が、最近は、富栄養化や埋立て、護岸工事などの人為的影響により、各地で生物生存が困難な状況にある。
[和田恵次]
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…アメリカ東岸のバリアは沖浜から直接にあるいは海岸に沿う砂の流れ(漂砂)によって砂が供給され,多くは数千年前に急速に成長し,現在は浸食過程にあるものもある。潟や湾の内側では波浪が弱いので,泥質の細粒物質が堆積して干潟をつくる。河川が湾や潟に流入する河口付近には三角州が形成され,干潟をなす所も多い。…
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