改訂新版 世界大百科事典 「タマスダレ」の意味・わかりやすい解説
タマスダレ
Zephyranthes
ヒガンバナ科の球根(鱗茎)を有する多年草。属名はギリシア語のzephyros(西風の神の意)とanthos(花の意)による。タマスダレ属Zephyranthes(英名atamasco lily)は,アメリカ大陸に約35~40種の原種があり,そのうち数種が春植えの鉢用や花壇用観賞植物として栽植される。タマスダレZ.candida(Lindl.)Herb.は,日本の暖地では雑草とまじって野生状態になっていることもあるほどじょうぶである。夏から秋に,高さ20cmほどの花茎に上向きの白い花を1個頂生し,それが多数群がって咲くようすは,円柱状の濃緑の葉とのコントラストが美しく,花壇の縁取りに多く利用される。アルゼンチン原産。よく似たサフランモドキZ.carinata(Spr.)Herb.(英名zephyr lily)は,中央アメリカ原産で桃色花をつける。温帯原産のタマスダレは最も作りやすく,春に植え込んで,多めに肥料を与えるとよい。他の熱帯・亜熱帯原産系の種は5月,地温が上昇してから植える方がよい。2~3日しか花がもたないので,切花にはほとんど使われない。繁殖は分球(株分け)と種子による方法があるが,種子から開花までは2年かかる。
執筆者:川畑 寅三郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報