改訂新版 世界大百科事典 「タレカット」の意味・わかりやすい解説
タレカット
tarekat
イスラム神秘主義教団タリーカのマレー・インドネシア語で,その教えも指す。マレー世界へのイスラムの布教にスーフィズムが果たした役割は大きく,すでに15世紀末にはマラッカにスーフィー(神秘主義者)が活躍しているが,教団の組織は17世紀以後メッカ巡礼者によって導入された。マレーシアでは九つのタレカットが現存し,カーディリー,ナクシュバンディー,アフマディーが優勢であるが,スマトラのナクシュバンディーのように政治活動は行わず,穏健で非戦闘的である。教団全体を統率する指導者はなく,各地方のリーダーはシャイクとよばれ,カリスマ的な指導者で敬虔な生活を送る行者である。週・月・年ごとの祭りはジクル(唱名),踊りを中心としてシャイクの家あるいはモスクで行われるが,ザーウィヤ(修道場)はない。シャイクは村々を定期的に巡回して信者の結束をはかる。ときには宗教行政の末端であるイマーム(指導者)を兼ね,ポンドック(イスラム教育のための塾)と密接な関係をもつ。
執筆者:前田 成文
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報