行者(読み)ギョウジャ

デジタル大辞泉 「行者」の意味・読み・例文・類語

ぎょう‐じゃ〔ギヤウ‐〕【行者】

仏道を修行する人。修行者。ぎょうざ。
修験道しゅげんどうを修行する人。修験者山伏
あんじゃ(行者)」に同じ。
えんの行者」の略。
[類語]雲水旅僧行脚僧虚無僧山伏雲衲うんのう普化僧薦僧こもそう修験者梵論ぼろ遍路

あん‐じゃ【行者】

《「あん(行)」は唐音禅宗で、寺内の諸種の用務をする者。行堂あんどう

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精選版 日本国語大辞典 「行者」の意味・読み・例文・類語

ぎょう‐じゃギャウ‥【行者】

  1. [ 1 ] 〘 名詞 〙
    1. 仏道を修行する人。念仏の人を念仏行者、真言を行ずる人を真言行者などという。修行者。行人。
      1. [初出の実例]「求法僧最澄 訳語僧義真 行者丹福成 担夫四人」(出典:延暦寺文書‐延暦二四年(805)二月日・最澄牒状)
      2. 「彌陀如来雲に乗りて光を放ちて行者の許におはします」(出典:栄花物語(1028‐92頃)玉のうてな)
      3. [その他の文献]〔釈氏要覧‐師資・行者〕
    2. 山林にこもる苦行者および修験道の行者。修験者。山伏。
      1. [初出の実例]「行者だちたる法師の、蓑うちしきたるなどが誦むななりと」(出典:枕草子(10C終)一二〇)
      2. 「家を出、世をのがれ、山林流浪の行者共なりぬべうこそ候へ」(出典:平家物語(13C前)三)
    3. 禅宗で、寺院の種々の用務にたずさわる有髪の給仕。行者(あんじゃ)行堂(あんどう)
    4. 江戸時代、寒中に行者姿で天神像を摺(す)った紙を子どもに与え、銭を乞い歩く乞食。まかしょ。
      1. [初出の実例]「錦絵と墨絵と行者もって居る」(出典:雑俳・柳多留‐二三(1789))
  2. [ 2 ] 役行者(えんのぎょうじゃ)をいう。
    1. [初出の実例]「大ぐんかけて山上し、行じゃ様をおがむ中」(出典:浄瑠璃女殺油地獄(1721)中)

あん‐じゃ【行者】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「あん」は「行」の唐宋音 ) 禅宗で、まだ得度しないで、寺の諸役に給仕する者。中国では有髪、日本では主として剃髪(ていはつ)した。また、得度・未得度に関係なく、寺院の雑用に使われる少年。行堂(あんどう)
    1. [初出の実例]「行者を召して蝋燭をともしなんどして」(出典:正法眼蔵随聞記(1235‐38)三)
    2. 「六祖恵能は五祖の下に行(アン)者になって」(出典:玉塵抄(1563)一二)

ぎょう‐ざギャウ‥【行者】

  1. 〘 名詞 〙ぎょうじゃ(行者)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「行者」の意味・わかりやすい解説

行者
ぎょうじゃ

苦行などによって超人間的な霊力をもつと信じられ、祈祷(きとう)、予言託宣(たくせん)、卜占(ぼくせん)などの宗教行為を行う人。神官や僧侶(そうりょ)と違う呪術(じゅじゅつ)宗教家であるが、それがかえって庶民信仰に合致するので、庶民の広い支持を受けている。したがって、特定の宗教や宗派、教派に属さないのが本来の姿であるけれども、時の宗教統制や行者のプライドなどから、宗派、教派に属している者が多い。歴史的には修験道(しゅげんどう)に属し、その修行方式に従ってきたが、いまは天台宗真言宗、日蓮(にちれん)宗などに組み込まれた者が少なくない。また教派神道(しんとう)として伏見稲荷(ふしみいなり)大社や出雲(いずも)大社に属する者もある。また、もっとも活発に活動する行者は御嶽(おんたけ)教で、木曽(きそ)御嶽修験道が江戸時代から神道化したので、神道の形をとりながら修験的修行と予言託宣と祈祷を行う。行者になるための苦行はいまはほとんど水垢離(みずごり)による禊祓(みそぎはらえ)であるけれども、修験的修行では山林抖擻(とそう)行や護摩(ごま)行、火渡り、剣登り、盟神探湯(くかたち)(熱湯に手を入れ、熱湯を頭からかぶる)などがある。しかし歴史的には焚身剥皮(ふんじんはくひ)(身体を焼き、皮を剥(は)ぐ)などの苦行があり、また外界から隔絶された参籠(さんろう)行によって罪を懺悔(さんげ)し煩悩(ぼんのう)を滅ぼせば、人間本有の霊力が引き出されると信じられた。したがって、行者の加持(かじ)祈祷といわれるものは、その祀(まつ)る神仏の力に行者の霊力が加わって、奇跡がおこるといわれる。また行者の加持祈祷は、病気治癒の祈願のほかに、災いの原因をなす目に見えぬ悪霊や動物霊を払い落とすと信じられ、科学を超えた非合理の世界で力を発揮する。たとえば悪魔怨霊(おんりょう)を払うとか、狐落(きつねおと)しや犬神(いぬがみ)落しなどである。それは原始的宗教観念に対する原始呪術であるが、現代においても行者の活動領域はきわめて大きい。過去の有名な山伏(やまぶし)は験者(げんじゃ)とよばれる行者であって、貴族社会においてももてはやされ、多くの奇跡談が伝えられる。奈良時代、天皇の側近にも行者集団が置かれて十禅師とよばれた。明治初年に出た林実利(はやしじつかが)行者などは朝野の信仰を集め、奈良の大峯山(おおみねさん)修験道では役行者(えんのぎょうじゃ)に次ぐ二代行者とまで称せられた。

[五来 重]

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改訂新版 世界大百科事典 「行者」の意味・わかりやすい解説

行者 (ぎょうじゃ)

修行者という意味と,行力(験力)を持った宗教者という二つの意味がある。行力も修行の結果得られるものであるが,修験道では修行途中の者も行者である。行者は神道的行者と仏教的行者に分けられ,それぞれの修行階梯を経て,祈禱や予言託宣,または卜占のような宗教的行為をする。神道的行者は禊祓(みそぎはらい)や垢離(こり)取りの水行をおこない,祝詞(のりと)を読みあげる。仏教的行者は水垢離も取るが,護摩などの火による浄化と滅罪真言や経文による浄化,苦行による浄化で罪と災いをはらう。この双方をおこなうのが修験道の山伏,行者である。このような行者は〈験者(げんざ)〉と呼ばれたが,のちには祈禱師とも呼ばれた。禅師というのも行者の別称である。
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百科事典マイペディア 「行者」の意味・わかりやすい解説

行者【ぎょうじゃ】

宗教の修行者。元来仏典の言葉で念仏行者,法華行者,真言行者などという。日本では特に山伏すなわち修験道(しゅげんどう)の行者をさし,また精進潔斎して白衣姿などの行装で霊地を巡拝するものをいう。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「行者」の意味・わかりやすい解説

行者
ぎょうじゃ

仏教を修行する者のこと。また,山伏などの修行者をもさす。禅宗では「あんじゃ」と読み,禅宗寺院で得度をせず種々の給仕をする者をさしていう。

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普及版 字通 「行者」の読み・字形・画数・意味

【行者】こうしや

行人。

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世界大百科事典(旧版)内の行者の言及

【僧】より

…仏教の出家修行者に対する総称。とくに男性を僧とよぶのに対し,女性は(あま)とよび,あわせて僧尼ともいう。…

【道者】より

…はじめは仏教や道教などの修行者を指すことばであったが,やがて,仏道修行に精進する在家(ざいけ)の人をいうようになり,さらに転じては,遠路,苦難をいとわず,先達に導かれて霊山,霊地に詣でる人々を呼ぶことになった。それは鎌倉時代の中ごろからである。…

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