タンガロア(読み)たんがろあ(英語表記)Tangaloa

改訂新版 世界大百科事典 「タンガロア」の意味・わかりやすい解説

タンガロア
Tangaroa

ポリネシア各地でタネトゥロンゴと並び,神話や宗教儀礼上で重要な位置を占める神。中部・西部ポリネシアでは最も重要な神であり,タヒチやサモアでは無限の空間にただ一人住む創造神タンガロアが天,地,人間等を造ったと語られる。その他の地域では神々の中に重要な地位を占めるが,創造神として語られることはない。ハワイでは悪,不幸の神で,大ダコとしてあらわれる。ニュージーランドでは天と地の息子たちの一人で,海の生物トカゲはタンガロアの息子である。またポリネシア各地で海の神として漁師に崇拝され,マルキーズでは漁場の近くにあるタンガロアの社に魚を奉納する習わしがあった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「タンガロア」の意味・わかりやすい解説

タンガロア
たんがろあ
Tangaloa

ポリネシア全域に広くみいだされる神々のうちで、もっとも重要な神。とくに西ポリネシアでは創造者、天の神、あるいは海の神として、高位の首長系譜の遠い祖先と結び付けられている。たとえばサモアでは、首長の系譜は創造者タンガロアまでたどることができるといわれ、彼の創造活動を語る神話では、創造者タンガロアのほかに、不動のタンガロア、伝令タンガロア、職人タンガロアなどが登場して世界や人間をつくりだしてゆく。また彼は、天に住む卓越した神として、太陽、月、虹(にじ)、雷などの天体や自然現象と関係づけられたり、家屋カヌー建造起源とも結び付けられた。ハワイやマオリでは、タンガロアの重要性は減少する。

[青柳まちこ]

『青柳真智子著『ポリネシアの創世神話について』(『日本神話の比較研究』所収・1974・法政大学出版局)』

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世界大百科事典(旧版)内のタンガロアの言及

【宇宙】より

…そのいちばん底にテアケイアロエ(万物の根)が住み,その上にテタンガエンガエ(呼吸,生命),テマナバロア(長寿者)が住み,この3者が元来の創造維持原理であった。ヤシの実の空虚の中に,さまざまな下界や神々があり,その頂上にマンガイア島があり,その上方を10層の天が覆い,そこにタンガロア神が座を占めていた。この神は赤い土,あるいは自身の背中から人間を創造した。…

※「タンガロア」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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