改訂新版 世界大百科事典 「創世神話」の意味・わかりやすい解説
創世神話 (そうせいしんわ)
世界,人類,文化などの起源についての神話をさす。つまり原初において事物が創始され,秩序が設定されたことを語り,むしろ特定の神格の波乱万丈の生涯を語ることに主眼のある〈神々の神話〉ないし英雄神話と対照をなしている。世界起源神話は大きく分けて創造型と進化型とがあり,前者は創造神がなんらかの方法で世界を創造したという形式であって,これには創造神が単独で創造する形式,高神が1人あるいはそれ以上の協力者の助力を得て創造する形式とがある。進化型とは,創造神の介入なしに,ある種の原初の物質や胚素から宇宙が自発的に発達したという形式であって,これには,単一の原初物質,あるいは胚素から世界が発達したとするもの,二つ以上の,多くの場合人格化された自然諸力が作用しあうことによって宇宙が発達したとするもの,さらに人間の形をした,あるいは動物の形をした原古の存在,あるいはその身体の諸部分から宇宙が発生したとするもの,がある。人類起源神話の諸形式には,世界起源神話と類似した形式をもつものがある。つまり,創造神による創造,原初の存在の死体からの化生(けしよう)がそれであるが,他方では世界起源神話にはない形式もある。たとえば,地中からの人類出現,天からの降臨,動物が人類の先祖だとする神話である。文化起源神話は,作物起源神話などの形をとっており,ここでも創造神による創造,原古の存在の死体からの化生のように,世界起源神話と共通する形式があるほか,どこか(ことに天)から盗んでくる形式などもある。どの文化でも,世界起源,人類起源,文化起源の三つがそろっているとは限らず,メラネシアの多くの民族などでは,世界がすでに存在していることを前提として人類や文化の起源が語られる。創世神話の一種とみるべきものに,古い世界の壊滅と新しい世界の開始を語る洪水神話があり,死の起源神話は人類起源神話の一部である。
→宇宙 →神話
執筆者:大林 太良
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報