タンムズ(その他表記)Tammuz

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「タンムズ」の意味・わかりやすい解説

タンムズ
Tammuz

古代バビロニアの神。シュメール語ドゥムジ。毎年冬の間は冥界降り,その間世界は不毛になるが,春には復活して上界に復帰し,地母神的大女神イシュタルと神婚し,その寵愛を受け,大地はまた生産力を取戻して植物でおおわれると考えられた。タンムズの再来を泣いて祈念する婦人たちの儀式があり,『エゼキエル書』から,その祭祀パレスチナでも行われていたことが知られる。シュメール人は年間の特定の月を彼に捧げていたが,これは今日でも,タンムズの月としてユダヤ暦およびアラブ暦に残っている。セム人は彼を「アドン (主) 」と呼び,ギリシア神話アドニスは,このタンムズがフェニキアを経由して取入れられたものである。

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改訂新版 世界大百科事典 「タンムズ」の意味・わかりやすい解説

タンムズ
Tammuz

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世界大百科事典(旧版)内のタンムズの言及

【ドゥムジ】より

…シュメールの神で,その名は〈忠実な息子〉の意。アラム語文献や旧約聖書ではタンムズTammuzの名で呼ばれた。牧夫エンキドゥと争ってイナンナ(イシュタル)の愛を勝ちとりその夫となる神話,冥界に下り再び地上に戻ったイナンナの身代りとして冥界に送られ人々を悲嘆にくれさせる神話などが知られる。…

【農耕儀礼】より

…土地にまかれた種子が芽生え,生育し,やがて多くの実を結んで死滅してゆく過程を観察することによって,穀物にも霊魂や精霊が宿っていて,それが年ごとに死んではよみがえるという観念が導き出されたのであろうが,こうした観念は,古代オリエントに誕生し,旧大陸の文明の形成や発展に大きな役割を果たした麦栽培民の神話や儀礼のなかに顕著にみられる。
[古代オリエント]
 バビロニア神話では,植物を擬人化したタンムズ(ドゥムジ)が,豊穣と生殖の女神イシュタルの夫とされているが,彼は毎年,死んでイシュタルといっしょに冥界に降り,再び地上によみがえって再生すると考えられていた。そして,植物が枯れて死ぬ夏の盛りに,タンムズの祭りが行われ,人々は臼でひき砕かれたこの穀物の神の死を嘆くが,数日後には,タンムズの再生を祝う宴が行われた。…

※「タンムズ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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