日本大百科全書(ニッポニカ) 「ターンパイク定理」の意味・わかりやすい解説
ターンパイク定理
たーんぱいくていり
turnpike theorem
ターンパイクとは高速自動車道のことであり、経済の最適成長経路をターンパイクに例えて導出された定理がターンパイク定理である。たとえば、A地点から遠く離れたB地点へ行くのにいくつかの経路が考えられようが、時間的にもっとも効率的なのは、至近の地点からターンパイクに入り、それに沿ってノン・ストップで走り、その後B地点の近くでターンパイクから離れて目標のB地点へ進む経路である。このようなターンパイクに例えられるものが成長率最大の均衡成長経路であるいわゆるフォン・ノイマン型均衡成長経路であり、初期時点の経済状態がどのようなものであっても(A地点がどこにあろうと)、また目標状態がどのようなものであろうと(B地点がどこにあろうと)、途中の大部分の時間をノイマン型均衡成長経路に沿って成長するのがもっとも効率的であることを、閉鎖型モデル(外からの制約や財の流出がない経済)の場合についてサミュエルソンが証明し、ターンパイク定理と名づけた。以上に述べたのは、ターンパイクとしてノイマン型均衡成長経路をとった場合についてであるが、それは労働制約がなく、目標として計画期末の財ストックの最大化を考えたもので、資本蓄積ターンパイク定理とよばれるものである。これに対して、労働制約を考慮し、計画期間中の消費からの効用最大化を目標としたものが消費ターンパイク定理であり、この場合は黄金律経路がターンパイクとなる。
[羽鳥 茂]