アメリカの理論経済学者。1935年にシカゴ大学を卒業、1940年までハーバード大学大学院でシュンペーターに師事、1941年同大学から博士号を得た。1940年にマサチューセッツ工科大学(MIT)の助教授となり、1947年から1985年まで教授。第二次世界大戦中からアメリカ政府の経済関係機関の顧問や評議員などを務め、大統領ケネディの経済顧問としても活躍した。また計量経済学会やアメリカ経済学会などの会長も歴任し、内外の新聞や雑誌に多くの評論・時論を書いている。
彼の研究業績は、理論経済学だけでなく、計量経済学、統計学、数学などきわめて多岐に及ぶが、あえて分類すれば、乗数理論と加速度原理の統合、公共経済学への先鞭(せんべん)、バーグソン‐サミュエルソン型社会厚生関数をはじめとする厚生経済学への寄与、貨幣・利子理論などの巨視的経済理論の面と、需要理論における顕示選好理論の提示、(非)代替定理による産業連関分析への寄与、ターンパイク定理などによる最適成長理論、安定条件論、動学理論などの新古典派価格理論の面とに分けられよう。これら業績の摂取、批判、発展をめぐって現代経済学が進路づけられているといっても過言ではない。二大主著としては、経済分析の方法論を展開した『経済分析の基礎』Foundations of Economic Analysis(1947)と、近代経済学の標準的教科書『経済学』Economics(1948)があげられる。1947年にジョン・ベーツ・クラーク賞を、1970年にアメリカの経済学者として初めてノーベル経済学賞を受賞した。
[一杉哲也 2018年8月21日]
『R・ドーフマン、R・M・ソロー、P・A・サミュエルソン著、安井琢磨・福岡正夫・渡部経彦・小山昭雄訳『線型計画と経済分析』全2巻(1958、1959・岩波書店)』▽『佐藤隆三訳『経済分析の基礎』増補版(1986・勁草書房)』▽『P・A・サムエルソン、W・D・ノードハウス著、都留重人訳『サムエルソン 経済学』上下(1992~1993・岩波書店)』▽『篠原三代平・佐藤隆三編『サミュエルソン経済学体系』1~10(1979~1997・勁草書房)』
スウェーデンの生化学者。ハルムスタードに生まれる。ルンド大学で医学を、さらにストックホルムのカロリンスカ研究所で医学と生化学を学び、1960年に医化学の博士号、1961年に医学の博士号を取得した。同年にカロリンスカ研究所の助教授となり、1967年王立獣医大学の教授に転じた。1973年にカロリンスカ研究所の生理化学教授および化学主任教授となり、1978年に医学部長、1983年に学長となり1995年まで務めた。
当初、コレステロールの代謝作用の研究を行っていた。1959年からはベルイストロームとともに、生理活性物質であるプロスタグランジンの分子構造を決定する研究に従事し、不飽和脂肪酸のアラキドン酸からプロスタグランジンが生合成されるメカニズムを解明した。その後もプロスタグランジンの研究を進め、その誘導体であり、強い生理活性作用をもつトロンボキサンを発見、さらに同様の物質ロイコトリエンを発見した。1982年には「プロスタグランジンとこれに関連した生理活性物質に関する発見」により、ベルイストロームおよびイギリスの生化学者ベインとともにノーベル医学生理学賞を受賞した。
[編集部 2018年8月21日]
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20世紀を代表するアメリカの経済学者。インディアナ州に生まれ,1935年シカゴ大学卒業,36年ハーバード大学修士,41年博士。マサチューセッツ工科大学(MIT)助教授(1940),準教授(1947)を経て,66年以来同大学のインスティチュート・プロフェッサー。主著《経済分析の基礎Foundations of Economic Analysis》(1947)は経済主体の行動を数学的に解析した古典で,経済学における数学の使用を不動のものにした。《経済学Economics》(1948,14版1980)は300万冊14版を重ね,20ヵ国語以上に翻訳された,経済学の最も標準的な教科書である。彼の名とともに知られる経済学の定理は数多く,《サミュエルソン論文集》全4巻(1966-77)には,消費者理論,生産者理論,厚生経済学,資本理論,国際経済学,財政学,金融論,人口論,経済学説史,数学,統計学など,経済学のあらゆる分野にわたる論文が収められている。〈経済学における最後のジェネラリスト〉と自他ともに認めるゆえんである。実物的経済理論をケインズ的財政政策で補完する〈新古典派的総合neo-classical synthesis〉の立場に立つ。1947年ジョン・ベイツ・クラーク・メダル受賞。70年ノーベル経済学賞受賞。アメリカ経済学会,エコノメトリック・ソサエティ,国際経済協会の会長を歴任。
執筆者:久我 清
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…この調整過程にしたがえば,一財の市場で需要曲線が右下がり,供給曲線が右上がりの標準的なケースでは,価格は時間とともに需給曲線の交点が与える均衡価格に収束することが知られる。 多数財の市場における安定性は最初J.R.ヒックスによって需要関数と供給関数の形状を用いての静学的方法によって分析されたが(静学的安定条件),P.A.サミュエルソンは先に述べたような形で調整過程の動学方程式を定式化し,安定のための十分条件を求めた(動学的安定条件)。彼の結果は後にK.アローやL.ハーウィッツらによって発展させられ,安定条件についてより適切な経済的な解釈が与えられるようになった。…
…投資乗数と,加速度原理,すなわち所得ないし産出量の増加が投資を誘発する関係の二つを結合して得られる乗数・加速度モデルは,線形モデルとして示される場合が多い。その代表がP.A.サミュエルソンのモデルである。またL.A.メツラーの在庫循環のモデルもこの型のものである。…
…ここでは長期的にインフレないしデフレをともなうことなく資本と労働の完全利用と完全雇用を維持するためには,いかなる財政手段を通じて成長率をコントロールするかが問われた。
【新古典派総合の財政学】
1960年代の後半になると,P.A.サミュエルソンがケインズ派のマクロ経済学の理論によって完全雇用が実現されたならば,古典派のミクロ経済学の理論は完全雇用経済では現実的妥当性をもつ有効な理論であるとし,ケインズ理論と古典派理論を総合した新古典派総合の経済学を主張した。財政学の分野では,マスグレーブRichard Abel Musgrave(1910‐ )が《財政理論》(1959)でこの立場を主張した。…
…ワルラスの後継者V.パレートは,ワルラスの基数的な効用理論をより一般的な序数的効用理論によっておきかえることに成功し,スウェーデン学派のK.ウィクセルは,ワルラスによって扱われた資本,利子,貨幣の分析を多方面に発展させた。また1940年を前後してJ.R.ヒックス,P.A.サミュエルソンは一般均衡理論の体系に比較静学の方法を導入し,同じころ,W.レオンチエフは産業間の相互依存をデータ分析が可能な形に具体化した産業連関理論(産業連関表)を開拓した。以後の均衡分析の発展では,均衡解の存在についての厳密な証明,安定分析,動態経済の分析,ゲーム理論との対応の研究などに重要な貢献が多い。…
…しかし分配の公正に関する価値判断そのものは経済学が定めうるものではないとしても,社会において関心の対象とされる価値判断が資源配分に対していかなる帰結を生むかを調べることは,依然として〈科学的〉研究の興味ある課題である。バーグソンAbram Bergson(1914‐ )およびP.A.サミュエルソンにより提唱された社会的厚生関数social welfare functionは,このような研究プログラムを形式化した道具概念として導入されたものである。これは各個人への厚生分配の態様に応じて社会的厚生水準を指定する実数値関数であって,その対応規則のうちに分配に関する価値判断が結晶化されているものとされる。…
…J.M.ケインズ以前のいわゆる新古典派経済学とケインズ経済学(ケインズ学派)を総合して考える現代経済学の正統的な立場を表した言葉であり,1960年代にP.A.サミュエルソンがその著名な教科書《経済学》によって広めたものである。新古典派経済学によれば,経済学は一定の資源をいかに有効に配分するかということをその課題とする。…
…各国文学の間の国際的影響,交流,対応関係に関する研究。
[発生]
ヨーロッパ諸国における近代的文学研究は,まず,18世紀末から興ったナショナリズムの風潮を受けて,各国文学それぞれ個別に,独立一貫した流れとしてとらえようとする方向に進んだ。これが,一国の文学の発展を順に時代を追ってたどる,いわゆるイギリス文学,フランス文学,ドイツ文学などの方法であり,現在に至るまで文学研究の正統主流の位置を占めている。…
※「サミュエルソン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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