日本大百科全書(ニッポニカ) 「サミュエルソン」の意味・わかりやすい解説
サミュエルソン(Paul Anthony Samuelson)
さみゅえるそん
Paul Anthony Samuelson
(1915―2009)
アメリカの理論経済学者。1935年にシカゴ大学を卒業、1940年までハーバード大学大学院でシュンペーターに師事、1941年同大学から博士号を得た。1940年にマサチューセッツ工科大学(MIT)の助教授となり、1947年から1985年まで教授。第二次世界大戦中からアメリカ政府の経済関係機関の顧問や評議員などを務め、大統領ケネディの経済顧問としても活躍した。また計量経済学会やアメリカ経済学会などの会長も歴任し、内外の新聞や雑誌に多くの評論・時論を書いている。
彼の研究業績は、理論経済学だけでなく、計量経済学、統計学、数学などきわめて多岐に及ぶが、あえて分類すれば、乗数理論と加速度原理の統合、公共経済学への先鞭(せんべん)、バーグソン‐サミュエルソン型社会厚生関数をはじめとする厚生経済学への寄与、貨幣・利子理論などの巨視的経済理論の面と、需要理論における顕示選好理論の提示、(非)代替定理による産業連関分析への寄与、ターンパイク定理などによる最適成長理論、安定条件論、動学理論などの新古典派価格理論の面とに分けられよう。これら業績の摂取、批判、発展をめぐって現代経済学が進路づけられているといっても過言ではない。二大主著としては、経済分析の方法論を展開した『経済分析の基礎』Foundations of Economic Analysis(1947)と、近代経済学の標準的教科書『経済学』Economics(1948)があげられる。1947年にジョン・ベーツ・クラーク賞を、1970年にアメリカの経済学者として初めてノーベル経済学賞を受賞した。
[一杉哲也 2018年8月21日]
『R・ドーフマン、R・M・ソロー、P・A・サミュエルソン著、安井琢磨・福岡正夫・渡部経彦・小山昭雄訳『線型計画と経済分析』全2巻(1958、1959・岩波書店)』▽『佐藤隆三訳『経済分析の基礎』増補版(1986・勁草書房)』▽『P・A・サムエルソン、W・D・ノードハウス著、都留重人訳『サムエルソン 経済学』上下(1992~1993・岩波書店)』▽『篠原三代平・佐藤隆三編『サミュエルソン経済学体系』1~10(1979~1997・勁草書房)』
サミュエルソン(Bengt Ingemar Samuelsson)
さみゅえるそん
Bengt Ingemar Samuelsson
(1934― )
スウェーデンの生化学者。ハルムスタードに生まれる。ルンド大学で医学を、さらにストックホルムのカロリンスカ研究所で医学と生化学を学び、1960年に医化学の博士号、1961年に医学の博士号を取得した。同年にカロリンスカ研究所の助教授となり、1967年王立獣医大学の教授に転じた。1973年にカロリンスカ研究所の生理化学教授および化学主任教授となり、1978年に医学部長、1983年に学長となり1995年まで務めた。
当初、コレステロールの代謝作用の研究を行っていた。1959年からはベルイストロームとともに、生理活性物質であるプロスタグランジンの分子構造を決定する研究に従事し、不飽和脂肪酸のアラキドン酸からプロスタグランジンが生合成されるメカニズムを解明した。その後もプロスタグランジンの研究を進め、その誘導体であり、強い生理活性作用をもつトロンボキサンを発見、さらに同様の物質ロイコトリエンを発見した。1982年には「プロスタグランジンとこれに関連した生理活性物質に関する発見」により、ベルイストロームおよびイギリスの生化学者ベインとともにノーベル医学生理学賞を受賞した。
[編集部 2018年8月21日]