日本大百科全書(ニッポニカ) 「最適成長経路」の意味・わかりやすい解説
最適成長経路
さいてきせいちょうけいろ
optimal growth path
異時点間にわたる長期の経済計画に関して、ある基準からみて、各時点において経済社会がたどるべき経路のことをいう。一般的には、経済社会に課される種々の制約条件の下で、設定された目的関数を最大化するという形で定式化されたモデルの最適解として得られることになる。たとえば、経済社会の厚生を最大化するような各時点の資源配分や資本蓄積率などがその具体的内容になっている。この場合、当然のことながら、設定される目的関数や課される制約条件に最適成長経路は依存することになる。制約条件については、生産技術上の制約とか資源供給の制約などが考慮に入れられており、目的関数としては、厚生経済学の立場から、社会全体の消費量あるいは1人当り消費量に基づく効用関数の割引現在価値が一般的に採用されている。
この最適成長経路の問題を最初に論じたのが1928年に発表されたフランク・ラムゼーの最適貯蓄に関する論文であり、多部門成長理論に関連しての1937年のフォン・ノイマンの論文などで先駆的業績とされている。その後、この最適成長問題は多くの経済学者によって研究され、いっそうの理論的発展を遂げており、その成果は、均衡成長経路と最適成長経路との関係を明らかにしたターンパイク定理として確立されている。
[羽鳥 茂]