ダヤク族(読み)ダヤクぞく(その他表記)Dayak
Dyak

改訂新版 世界大百科事典 「ダヤク族」の意味・わかりやすい解説

ダヤク族 (ダヤクぞく)
Dayak
Dyak

オランダ系の民族学においては,ボルネオ島(カリマンタン)に住むプロト・マレー人系の原住民の総称として〈ダヤク〉の名称が一般的に用いられる。したがってこの語に各民族名を冠し,カヤン・ダヤク,クニャー・ダヤク,ヌガジュ・ダヤク,海ダヤク(イバン族),陸ダヤクなどの複合名称がしばしば用いられる。ダヤク諸族間の言語・文化的類縁関係については諸説があるが,ごく大きく分けて,(1)フィリピンの諸民族と近い北部群(とくにムルット族),(2)中央カリマンタン諸族(カヤン族クニャー族を含む),(3)西ボルネオ諸族(イバン族,陸ダヤク)の3群を認めることができる。

 ダヤク諸族全体を通して焼畑陸稲栽培,顕著なアニミズム的世界観,発達した葬制,双系的な社会構造などの共通性が存在する。農耕方式における例外としては,北部高地のケラビット族の棚田耕作,西部海岸のミラナウ族のサゴヤシ栽培が文化史的に重要である。ボルネオ島の各地方海岸部に住むマレー人の起源は,多くの場合イスラム化したダヤク族に求められるであろう。現在でも進行中の社会過程としてダヤク族のイスラム化=マレー化は,東南アジア島嶼部の歴史を理解するうえで重要な現象である。ボルネオ北西部を占めるサラワク(現,マレーシア領)では,イギリス植民地時代からダヤクの語を海ダヤクと陸ダヤクに限定して用いてきた。日本でダヤク(ダイヤ)族という場合,実際にはイバン族をさしていることが多い。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のダヤク族の言及

【棺】より


【東南アジア・太平洋海域】
 ボルネオ島のプナン族の棺は立木の幹に穴をあけ,この中に遺体をいれるが,そのあとで穴を封じて去る。同島のダヤク族の棺は幹を縦二つに切り割って内部をほりくぼめたものだが,カヌー(丸木舟)形とし,外面にはヘビ,トカゲ,あるいはフィリピンのルソン島のと同様に牛頭を彫刻する。スラウェシ島北部のミナハサ族は石棺を用いる。…

※「ダヤク族」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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