改訂新版 世界大百科事典 「プロトマレー人」の意味・わかりやすい解説
プロト・マレー人 (プロトマレーじん)
Proto-Malays
原マレー人ともいう。アウストロネシア語族に属するマレー語を話すマレー人は文化的に開化マレー人と原マレー人に分類される。ハイネ・ゲルデルンRobert Heine-Geldernは生業その他の文化的観点から,原マレー人をさらに原始マレー人Primitivmalaienと古マレー人Altmalaienに分類した。比較的最近まで狩猟,採集を主たる生業としていた原始マレー人には,マレー半島のジャクン族,オラン・ダラット族,スマトラ島東岸のクブ族などのほか,オラン・ラウト族(〈海の人〉の意)と一括されるインドネシアの舟を住居とし漁労に従事する諸民族が含まれる。古マレー人はスマトラのガヨ族,バタク族やニアス,メンタウェイ,エンガノなどの各島民,ボルネオ島のドゥスン族,クニャー族(ケンヤー族),イバン族,陸ダヤク族,スラウェシ島のトラジャ族,フィリピンのルソン島北部のカンカナイ族,イフガオ族,ボントック族,カリンガ族,ティンギアン族,ミンダナオ島のバゴボ族,マノボ族,ブキドノン族,スバヌン族その他が含まれる。
原マレー人は前2500年ころから,新石器時代の祖先が中国南部雲南省の原郷からメコン川沿いに南下し,さらに東南アジア島嶼部に拡散したものと考えられる。人種的には古モンゴロイドに属し,中身長,直毛または波状毛をもち,褐色の皮膚である。原始マレー人は古マレー人よりは身長が低い。バナナ,サトウキビ,パンノキの実,ヤムイモ,タロイモなどの作物,犬,豚,鶏などの家畜,磨製石器,土器,杭上家屋などは共通の文化であると考えられる。一部の古マレー人は早くから犂耕による水稲耕作を行ったが,原マレー人の大部分は焼畑農耕民である。
→マレー人
執筆者:合田 濤
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報