改訂新版 世界大百科事典 「カヤン族」の意味・わかりやすい解説
カヤン族 (カヤンぞく)
Kayan
ボルネオ島中央部に住むプロト・マレー系の民族で,陸稲を主とする焼畑農耕を営む。マレーシア連邦サラワク州に1万,インドネシア領内に4000ほどの人口をもつ(1975)。ロングハウス(長屋形式の高床式住居)に居住し,通常1軒の家屋が1集落を成す。親族制度は双系的で,ロングハウスの1室を占める直系家族より大きな親族集団は存在しない。各集落は独立的であるが,その中心には世襲の首長,貴族がおり,集落間の関係は貴族層の親族的紐帯によって調整されている。伝統的に鉄鍛冶に優れ,また音楽・美術的にも洗練された文化をもつ。耳朶は重いシンチュウ製の輪をつけるため長くたれ下がっており,女性は腕,脚に精緻な入墨をほどこす。民族宗教について詳細なことは知られていないが,隣族クニャー族のそれを革新したものと言われるブンガン教が,第2次大戦後急速に広まった。サラワク州ではカトリック,インドネシアではプロテスタントへの改宗も著しい。
執筆者:内堀 基光
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報