改訂新版 世界大百科事典 「チャンカイ文化」の意味・わかりやすい解説
チャンカイ文化 (チャンカイぶんか)
ペルー中部海岸のチャンカイChancay川流域を中心に1000-1400年ころ栄えた文化。チムー王国(チムー文化)の南端に位置し,南部海岸のイカ,チンチャ文化とのはざまにあって,小規模ながら独自の文化を形成している。考古学調査が十分に行われておらず,文化の生成・発展について不明なところが多い。しかし住居址や墓から盗掘された膨大な遺物によって,この文化の個性はよく知られている。土器は壺,鉢の類で,つくりはやや粗雑である。幾何学文,動植物文を白地に黒で描いた文様部にたいして,特有のざらついた器面をうまく配する。人をかたどった大型の壺の顔や土偶にはユーモラスな表情がある。遺体を包む織物類にみる技術は高度で,綴れ織,描き染,絞染など種類も多く,特にレースの発達はみごとである。彼らの生活を描写した布製の人形もまた副葬される。チャンカイ文化の遺物,ことに織物類は,リマ市にある天野博物館のコレクションが世界随一であり,この分野の研究に欠くことのできない資料を提供している。
執筆者:松沢 亜生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報