チョウチンゴケ

改訂新版 世界大百科事典 「チョウチンゴケ」の意味・わかりやすい解説

チョウチンゴケ

蘚類のチョウチンゴケ科Mniaceaeの総称。世界に12属約100種,うち日本に7属約30種ある。植物体は直立または匍匐(ほふく)し,葉はふつう幅広く,中央脈が明りょうで,葉細胞は大きい。蒴(さく)は大きく円筒状で,ふつう傾斜または下垂する。蒴歯はよく発達し,内外2列に配列する。和名は蒴を提灯に見立てたもの。ツルチョウチンゴケPlagiomnium maximowiviczii (Lindb.) Kop.は全国の山地にふつうに産し,地上や岩上に群生する。植物体は淡緑色,匍匐茎がよく発達する。コバノチョウチンゴケTrachycystis microphylla (Doz.et Molk.) Lindb.は全国の低山地にふつうにみられ,社寺や人家の庭にも多い。やや陰湿な場所の土上,岩上,腐木上などに群生する。植物体は暗緑色であるが,春の新芽は黄緑色で美しい。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「チョウチンゴケ」の意味・わかりやすい解説

チョウチンゴケ
ちょうちんごけ

コケ植物チョウチンゴケ科の種類の総称。半日陰地の湿った場所に多く、茎は直立するか横にはい、葉には明瞭(めいりょう)な中肋(ちゅうろく)がある。雌雄同株または異株。蒴(さく)は卵形ないし円筒形で、柄(え)から垂れ下がってつくので、この形を提灯(ちょうちん)に見立てて和名がつけられた。日本には7属約30種がある。

 コツボゴケ(コツボチョウチンゴケ)Plagiomnium trichomanesは横にはう茎と直立茎があり、直立茎の先には生殖器官をつける。匍匐(ほふく)茎の先は地上について、ここに新芽をつくる。葉は広い卵形。湿りやすい場所に多く、苔庭(こけにわ)によく利用される。アツバチョウチンゴケP. succulentumはコツボゴケに似るが、葉がより大形で濃い緑色を呈する。ナメリチョウチンゴケMnium laevinerveは茎が直立し、葉は卵形ないし卵状披針(ひしん)形。縁(へり)には鋭い歯がある。エゾチョウチンゴケTrachycystis flagellareは直立茎だけをもち、高さ2~3センチメートル、茎の先端に細長い無性芽が多数つき、葉は披針形

[井上 浩]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「チョウチンゴケ」の意味・わかりやすい解説

チョウチンゴケ
Mnium

セン類チョウチンゴケ科チョウチンゴケ属の総称。日本には約 30種が知られる。本属は,長い 蒴柄の上にある 蒴が傾くか下垂してつき,ちょうちんのようになるのが特徴である。茎は直立することが多く,葉は楕円形ないしうちわ形をなし,葉縁の細胞は葉身部の細胞とは形が異なる。日本産のおもな種としては,コバノチョウチンゴケ,コツボチョウチンゴケ,ウチワチョウチンゴケなどがある。しかし本属の範囲の取扱いについては,従来異論もある。

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