改訂新版 世界大百科事典 「チョローラピテクス」の意味・わかりやすい解説
チョローラピテクス
Chororapithecus
エチオピアのミドル・アワシュから発見された約1050万年前の大型の化石類人猿。2007年に諏訪元らによって記載された。チョローラピテクス・アビシニクスC.abyssinicus1種を含む。属名は発見地近くの村名,種小名はエチオピアの旧呼称アビシニアにちなむ。遊離歯化石が発見されており,大臼歯は分厚いエナメル質をもち,植物の繊維質を効果的に剪断するための構造が発達を始めている。線維食に適した特徴からゴリラの祖先の可能性が高いとされている。これが正しい場合,アフリカ類人猿に見られる薄いエナメル質は二次的に進化したこと,エナメル質の厚さは自然淘汰によって容易に変化することが示唆される。また,ゴリラの系統が1000万年前以前に現れていたとすれば,チンパンジーとヒトとの分岐も含め,これまで唱えられた現生ヒト上科の分岐年代は新しすぎるため,大幅な見直しが必要である。
執筆者:中務 真人
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報