改訂新版 世界大百科事典 「ツィンク」の意味・わかりやすい解説
ツィンク
Burkard Zink
生没年:1396-1474
南ドイツ,アウクスブルクの年代記作者。1475年没との説もある。メミンゲンに生まれ,聖職者にしようという周辺の期待に反して商業活動を志す。しかし必ずしも成功せず,傭兵軍役に従事するなど波乱に富む経歴の後,アウクスブルク市参事会にその才能を認められて対外使節の随員となったり書記として働いた。1368-1468年の市史を内容とする4巻の年代記を残したが,とくにその最後の巻は,彼自身の直接的体験や同時代の人々の報告に基づいており,史料的価値が高い。政治的事件と並んで,天候,物価,統計的集計のような覚書も含まれ,当時の社会・経済生活の貴重な史料ともなる。また事実を断片的に記しただけの年代記と異なり,封建諸侯の圧力の前に市の防衛を憂える市民の気持の記録でもある。
執筆者:魚住 昌良
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報