出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… 哺乳類になると上顎では二次口蓋が完成し,歯は前顎骨(切歯骨,間顎骨ともいう)と上顎骨だけに生える。また,もと上顎の骨格だった方形骨が中耳に転位してきぬた骨になり,もと下顎の後端にあった関節骨も中耳に入ってつち骨になる。ここに哺乳類の特徴である3個の耳小骨が完成する。…
…硬骨魚類,両生類,爬虫類,鳥類の下顎骨格は原則的にこの状態にある。そのうち後部の関節骨と角骨は,爬虫類が哺乳類へ進化した過程で変形し,頭蓋骨の側へ移ってそれぞれつち骨と鼓骨に転化する。他方,下顎の前部にあって歯を備えた歯骨は,進化の過程でしだいに拡大した。…
…哺乳類では,下顎の骨格が爬虫類段階の歯骨(下顎骨)だけで形成されるように著しく変化したことと関連して,耳小骨にも大きな変化が生じている。すなわち,もと爬虫類の顎関節をなしていた方形骨と関節骨が退化変形して関節部から離れ,中耳へ移ってそれぞれ第2,第3の耳小骨,つまりきぬた骨とつち骨になったと考えられている。こうして哺乳類の中耳は,あぶみ骨→きぬた骨→つち骨という3個の耳小骨の連鎖をもつ結果となり,つち骨が鼓膜に内接している。…
…両生類,爬虫類,鳥類の単一の耳小骨(耳小柱)は哺乳類では〈あぶみ骨〉になっている。祖先の爬虫類で顎関節をつくっていた上顎の方形骨と下顎の関節骨が変形・転位し,ともに中耳の空間に入り,それぞれ第2,第3の耳小骨,すなわち〈きぬた骨〉と〈つち骨〉になった。このようなわけで,哺乳類のきぬた骨とつち骨との関節は両生類,爬虫類,鳥類の顎関節と相同であることになる。…
…そしてもとの下顎軟骨は,前記のように終生メッケル軟骨として残存する両生類を除いて,変形,退化していく。下あごの骨格は爬虫類までの脊椎動物では数種類の骨の複合体であるが,哺乳類様爬虫類と呼ばれる絶滅した高等爬虫類が哺乳類へ進化する過程で,関節骨が中耳に移ってつち骨に変形した(同時に上あごでは方形骨がきぬた骨に変形)。それとともに,皮骨性の歯骨がしだいに拡大し,哺乳類ではこれだけが下顎骨格をなし,それが上あごの皮骨である鱗状骨(側頭骨)と顎関節をつくる結果となった。…
…ところが爬虫類のなかから進化した哺乳類では,爬虫類段階で顎関節をつくっていた頭蓋側の方形骨と下顎後端の関節骨が縮小変形して鼓室の中に入り,それぞれ第2,第3の耳小骨になった。ここで哺乳類の大きな特色である三つの耳小骨の連鎖が完成し,もとの耳小柱は〈あぶみ骨〉,第2・第3の耳小骨はそれぞれ〈きぬた骨〉〈つち骨〉と呼ばれることになる(このため両生類などの耳小柱をあぶみ骨と呼ぶこともある)。哺乳類ではつち骨が鼓膜に内接するが,鼓膜のその部分は哺乳類の成立とともに新たに加わったものであるといわれている。…
※「ツチ骨」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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