改訂新版 世界大百科事典 「ツツシンクイムシ」の意味・わかりやすい解説
ツツシンクイムシ
甲虫目ツツシンクイムシ科Lymexylidaeの昆虫の総称名。英名はship-timber beetle。昔,スウェーデンにおいて,この科の甲虫が古船を食害したため,国王がリンネに命じて調査させたといわれる。成虫の体は,その名のように円筒形で細長く軟弱。触角は短く,後翅は縦にたたまれる。上翅が退化して著しく小さいコバネツツシンクイAtractocerus niger,翅端が黒色のツマグロツツシンクイHylecoetus cossisなど,日本からは4種が知られる。いずれも立枯木,倒木,伐採木など活力を失った木に穿孔(せんこう)する。ツマグロツツシンクイは体長9~18mm。ブナなどの樹皮に産卵管を挿入して点々と産卵。幼虫は錐(きり)で穴をあけたように中心へ向かってまっすぐに食べ進む。幼虫は胸脚を有し,腹部末端節は細長く後方へ突出し,食べかすを木の外へ押し出す。7~8月ころ木の中で成虫となり脱出する。ツツシンクイムシ科は世界で50種余りが記録されているが,甲虫目中で最も原始的な形態を維持しているとみる学者もいる。
執筆者:林 長閑
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報