改訂新版 世界大百科事典 「ティタニア」の意味・わかりやすい解説
ティタニア
Titania
シェークスピアの戯曲《真夏の夜の夢》のオベロン王の妃で,どんぐりの殻に入るほどの微小で優美な妖精の女王。人間に似て,取替子(とりかえこ)の所有権をめぐり王とけんかしたり,恋をしたりするが,月の女神に類似した性質を持つ。オウィディウスの《転身物語》にウラノス(〈天〉)とガイア(〈地〉)との間に生まれた巨人神族(ティタン)が登場するが,その一人で太陽神ソルの妹,月の女神ルナおよび彼女と同一視されたディアナを〈ティタンの娘(ティタニア)〉と呼んでいるところにこの名は由来するとされる。なお,シェークスピアはA.ゴールディングの訳本を通じて《転身物語》に親しんでいた。ジェームズ1世も《悪魔学》(1597)の中で,ディアナと侍女たちを妖精と呼んでいるように,イギリスでは,月の女神と妖精の女王を同一視する場合が多い。
執筆者:井村 君江
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報