日本大百科全書(ニッポニカ) 「ディアナ」の意味・わかりやすい解説
ディアナ
でぃあな
Diana
ローマ神話の女神。ギリシア神話のアルテミスと同一視されている。もっとも有名な崇拝地はローマ近辺のネミ湖畔にあるアリキアで、「森のディアナ」(ディアナ・ネモレンシス)という名で、森の神ウィルビウスとともに祀(まつ)られた。そこを守る神官は「森の王」(レクス・ネモレンシス)とよばれ、その地位を望む者は神官に決闘を挑んで相手を殺せば就任が認められた。この野蛮な習慣のため、ディアナは人身御供(ひとみごくう)を強要するタウリスのアルテミスと同一視されたものらしい。またウィルビウスは「二度生きた者」を意味するため、ギリシアの英雄テセウスの息子にしてアルテミスの信奉者、また死してのちよみがえったとされるヒッポリトスとみなされた。ディアナ神はのちにセルウィウス・トゥリウス王によって、ローマのアウェンティヌス丘の神殿に移され、おもに庶民や奴隷の崇拝対象となった。また元来、樹木の女神であり、農民の崇拝を経て、多産の神ともなった。さらに月の女神ともみなされ、ときには地下の女神ヘカテと混同された。英語読みはダイアナ。
[小川正広]