百科事典マイペディア「転身物語」の解説
転身物語【てんしんものがたり】
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…その名はクモの意。オウィディウスの《転身物語》によれば,彼女は小アジアのリュディア地方の寒村に住む機織の名手であったが,慢心して技芸の女神アテナに技競べを挑み,一点の非の打ちどころもないみごとな織物を織り上げたものの,それを女神に引き裂かれ,絶望して首をくくった。しかし彼女は女神に命を救われ,腹から糸を吐いて機織に励むクモに変じられたという。…
…こうして,ギリシア・ローマ神話も〈道徳哲学〉(トゥールの司教ラバルダンのイルドベール)のひとつとみなす倫理観が生まれた。14~15世紀にはオウィディウスの《転身物語》もキリスト教の倫理体系の枠のなかで釈義され,《教訓版オウィディウスOvide moralisé》がもてはやされる。例えば,太陽の息子ファエトンの墜落の神話は反逆天使ルシフェルのアレゴリーと解釈するたぐいである。…
…詩人は今や〈恋の教師〉となった。 円熟期の彼は,ギリシア,ローマ,オリエントの神話と歴史伝説から,人間が動植物や星に変わる物語を集めて,これを宇宙生成からアウグストゥス神化の予言に至るまで,時代順に,しかも切れ目なくつなぎ合わせた叙事詩《転身物語》15巻に取り組み,並行して,ローマの祭日と祭礼を,それに関係のある神話伝説とともに,暦の順に説明する縁起物語風の《祭暦》(予定では12巻)の執筆を始めた。しかし《転身物語》の初稿を完了し,《祭暦》の6巻まで脱稿したところで,紀元後8年,アウグストゥスによりトミス(現,ルーマニアのコンスタンツァ)への追放を言い渡された。…
…先述の経緯で,ローマの作家も資料として無視しえない。ウェルギリウス,ホラティウスの作品,とくに,オウィディウスの《転身物語》はローマ的変質も大きいが,後に及ぼした影響も大きい。また中世ビザンティン時代の学者によりなされた,古代の書物の要約,抜粋も重要な資料となる。…
…ただしローマ人の眼前にあったエロスは,古いヘシオドス的な大神ではなく,裸体で,肩に翼をつけ,気まぐれに恋の矢を放ついたずら好きの幼児というヘレニズム期の詩人や美術家が好んで描いたエロスであった。この姿でうけつがれたクピドは,オウィディウスの《転身物語》の中で,アポロ神には黄金の矢を射かけて恋心をおこさせる一方,ニンフのダフネには鉛の矢を放って恋愛を嫌悪させ,ウェルギリウスの《アエネーイス》では,カルタゴの女王ディドにアエネアスへの恋をかきたたせている。またアプレイウスの《黄金のろば》には,美少女プシュケーとの有名な恋物語がある。…
…おもなものは,(1)海神。オウィディウスの《転身物語》によれば,彼はもとボイオティア地方のアンテドンの漁夫であったが,たまたま口にした薬草のおかげで,上半身は人間,下半身は魚の姿をした海神となった。その後,まだ美少女だったスキュラSkyllaに求愛したものの相手にされなかったため,魔女キルケに助力を請うたところ,彼女はスキュラを海の女怪に変じてしまったという。…
…さらに下って2世紀に活躍した天文学者プトレマイオスはその著作《アルマゲスト》の第7,第8の2巻を星表とし,ここに48星座を記録している。またローマの詩人オウィディウスは叙事詩《転身物語》でギリシア神話の神々や英雄の物語を述べているが,今日語りつがれている星座の神話はこの著作に負うところが多い。 《アルマゲスト》のギリシア語写本はイスラム文化圏に渡り,9世紀にアラビア語への翻訳が行われ,このアラビア語版が中世世界に流布した。…
…彼は体験ではなく,知識と想像力と修辞によって恋愛詩を書いた。最初の《恋の歌》ではしきたりに従って自分の恋に見せかけているが,次の《名婦の書簡》では主体的恋愛詩をやめて,神話の女性の恋を歌うギリシアの客観的恋愛詩に戻り,《女の顔の手入れについて》《アルス・アマトリア》《恋の治療法》では皮肉な理論と教訓に転じ,ついには恋愛詩自体を放棄して,神話伝説を歌う叙事詩《転身物語》とローマの祭礼の縁起を歌う《祭暦》に没頭した。こうして彼はギリシア・ローマの恋愛詩の伝統を総括し,完成させ,それに終止符を打った。…
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