翻訳|Titan
ギリシア神話で,オリュンポス神以前の巨人族の神。タイタンはその英語読み。通例,オケアノス,コイオス,クレイオス,ヒュペリオン,イアペトス,クロノスの6柱の男神とテイア,レア,テミス(〈掟〉),ムネモシュネ(〈記憶〉),フォイベ,テテュスの6柱の女神をいい,いずれもウラノス(〈天〉)とガイア(〈地〉)の子。これらの名の一部はギリシア語では説明されないところから,先住民族からの継承と考えられ,また一部は抽象名詞の擬人化である。神話では,上記12神の末子のクロノスが父ウラノスの陽物を切り落として天地の支配権を奪ったが,彼を頭とするティタン神族は,やがて,クロノスの末子ゼウスを盟主とするオリュンポス神との10年にわたる戦い(ティタノマキアTitanomachia)に敗れ,地底はるかなタルタロスに幽閉されたという。なお,ヒュペリオンとテイアの子たる太陽神ヘリオス,イアペトスの子アトラス,プロメテウスなども,しばしば,ティタンの名称で呼ばれる。
執筆者:水谷 智洋
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ギリシア神話で、ゼウスを中心とするオリンポス神族に先だって世界を支配していたクロノスとその一族。ティタネスTitanes(複数形)ともよばれる。英語読みでタイタン、天文学の土星の衛星名はチタンと表記する。ガイア(大地)とウラノス(天空)を両親とし、普通、男神6人と女神6人の12神をさす。ガイアはこれらの神々のあとキクロペスとヘカトンケイルを生むが、ウラノスはその奇怪な姿を嫌って生まれるとすぐに彼らを大地(ガイア)の奥底に隠した。母のガイアはこれを怒り、無法な父に報復するようティタンたちをけしかける。父を恐れて一同沈黙するばかりであったが、末子のクロノスだけは母の求めに応じてウラノスを待ち伏せし、その生殖器を鎌(かま)で切り取る。こうして父にかわりクロノスが天地の支配権を得たが、クロノスもやがて末子のゼウスに支配権を奪われる。そしてゼウスとの10年間にわたる戦い(ティタノマキア)に破れたティタンたちは、タルタロスに封じ込められる。おそらく、彼らはギリシアの先住民族から受け継がれた古い自然神であり、新来の民族の宗教に圧迫されて吸収された名残(なごり)であろうといわれている。
[伊藤照夫]
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…世界の最初の支配者。ヘシオドスの《神統記》によれば,大地女神ガイアの子として生まれた彼は,ガイアとの間に12柱のティタン神その他の子をもうけたが,それらの子すべてを大地の奥底タルタロスに押し込めたため,ガイアから父神の非道に報復するよう説得された最年少のティタン神クロノスによって,大鎌で陽物を切り落とされ,天地の支配者の地位を追われたという。【水谷 智洋】。…
…ゼウスは世界の支配を息子のディオニュソスに委ねようとした。だがティタン神たちが嫉妬して子どものディオニュソスを八つ裂きにして食べた(このディオニュソスをザグレウスともいう。ディオニュソスの神話と祭儀につきものの野獣の八つ裂きと生の肉食とがこの神みずからを対象としてなされたことになる)。…
…(2)新秩序の形成に抵抗する荒ぶる古神としての巨人伝説。古代ギリシア神話のギガンテスやティタン,グアテマラのキチェー族原住民のポポル・ブフ神話のカブラカンCabracánやシパクナーXipacnáなどがこれに当たる。(3)15世紀までのヨーロッパ人が遠いアジア地方の住民について抱いたイメージのような,未知の異民族に関する異形神話。…
…すなわち大地は天に添寝してクロノスを含む6人の男神と6人の女神とを生む。これがティタン神族である。ところが天は子を憎み,大地の奥処に隠して出ることを許さない。…
※「ティタン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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