改訂新版 世界大百科事典 の解説
テキサス・インスツルメンツ[会社]
Texas Instruments Inc.
アメリカにある世界最大級の半導体メーカー。電子機器や地質調査などの分野でも活躍している。略称TI。本社テキサス州ダラス。1938年同社の前身ジオフィジカル・サービス社Geophysical Service Inc.が設立された。この会社の主要業務は,大手石油会社の委託による石油鉱床の探査,およびそれに必要な電子機器の開発・製造であった。51年社名をゼネラル・インスツルメンツ社General Instruments Inc.に,さらに同年末には現社名に変えた。52年にウェスタン・エレクトリック社(WE)がトランジスター特許の使用を同社に認めたことから,半導体事業へ進出し,1年後には早くもトランジスターの生産を開始。54年には熱による劣化の激しいゲルマニウムに代えてシリコン(ケイ素)を素材としたシリコントランジスターを初めて開発,4年間にわたるシリコントランジスターからの独占的利益によって経営基盤を強固にした。59年にはTI社のエンジニア,キルビーJack St.Clair Kilby(1923-2005)がIC(集積回路)特許を出願し,IC開発への道を開いた。以後,TI社はフェアチャイルド社と並ぶICの最有力メーカーとして活躍してきた。60年代前半からは積極的な海外進出を始め,62年にイギリスのベドフォード,フランスのニース両工場が操業を開始し,68年には日本にも進出,ソニーと合弁会社を設立した(1971年12月に100%子会社の日本テキサス・インスツルメンツ社となる)。75年春には半導体技術を駆使した世界最初のワンチップマイクロコンピューターTMS-1000を発売し,ワンチップ化への動きに先鞭をつけた。以後,ICメーカーはこぞってワンチップ化に動き出し,77年末には三十数種にのぼるワンチップマイクロコンピューターが発売された。98年には防衛部門をアメリカのレイセオン社に売却した。売上高126億ドル(2004年12年期)。
執筆者:青木 良三
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報