日本大百科全書(ニッポニカ) 「テロ資金供与防止条約」の意味・わかりやすい解説
テロ資金供与防止条約
てろしきんきょうよぼうしじょうやく
International Convention for the Suppression of the Finanncing of Terrorism
あらゆる形態のテロリズムを廃絶するため、テロ組織などに資金が流れないようにする国際条約。テロ組織の資金受取りだけでなく、テロ組織への資金供与を明確に犯罪と定め、その犯罪に対する裁判権の設定や、犯罪に使用された資金の没収などを規定する国際的な取決めである。正式名称は「テロリズムに対する資金供与の防止に関する国際条約」で、略してテロ資金条約とよばれることもある。国際連合のテロ対策関連条約の一つで、国連総会が1999年12月に採択し、2002年4月10日に発効した。2015年8月時点で締約国は187か国。2001年のアメリカ同時多発テロをうけ、主要8か国(G8)首脳会議は同年9月の声明で、すべての国にテロ資金供与防止条約の早期批准を求めた。これを受け、日本政府は2001年(平成13)10月に同条約に署名し、国内法の整備を経て、2002年6月に批准した。
テロ資金供与防止条約は、締約国に対し、(1)テロ資金を提供する行為を罰する刑法などの法律の整備、(2)海外から逃げ込んだ容疑者を国内処罰しない際の、被害国への引渡し、(3)テロ資金提供の疑いのある金融取引の当局への通報、(4)金融機関に対する取引記録の保存などを求めている。なお国連のテロ対策関連条約には、テロ資金供与防止条約のほか、1963年に採択された航空機内の犯罪防止条約をはじめ、人質行為防止条約(1979年採択)、核物資防護条約(1980年採択)、プラスチック爆薬探知条約(1991年採択)、爆弾テロ防止条約(1997年採択)など10を超える条約がある。
[矢野 武 2016年7月19日]