法律(読み)ホウリツ

デジタル大辞泉 「法律」の意味・読み・例文・類語

ほう‐りつ【法律】

(ハフ‐)
社会秩序を維持するために強制される規範。法。
国会議決を経て制定される法の一形式。
(ホフ‐)
仏陀の教えと定めたきまり。
㋑仏が制定した戒律。小乗戒大乗戒などをいう。
[類語](1法令法規法制国法公法法典法度はっと典範条令条規禁令法網ほうもうのりロー

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精選版 日本国語大辞典 「法律」の意味・読み・例文・類語

ほう‐りつ【法律】

  1. 〘 名詞 〙
  2. [ 一 ] ( ハフ: )
    1. 法と律。国法と刑律。のっとるべき規律。のり。おきて。〔音訓新聞字引(1876)〕 〔荘子‐徐無鬼〕
    2. 統治者が制定または認定した規則。社会生活維持のために強制力をもつ社会生活の規範。
      1. [初出の実例]「禁制、畿内及近江国百姓、不法律」(出典:続日本紀‐和銅二年(709)一〇月丙申)
    3. 国会の議決を経て制定される成文法の一形式。国会議員または内閣により提案され、両議院可決ののち公布される。憲法に次いで、命令や規制に優先する効力をもつ。
      1. [初出の実例]「人為の身とは〈略〉人智を以て法律を設け此法律に従て進退するものを云ふ」(出典:西洋事情(1866‐70)〈福沢諭吉〉二)
    4. を研究する学問。法学。法律学。
      1. [初出の実例]「先づ文学、法律、理財の三科を教授し」(出典:風俗画報‐二四四号(1902)慶応義塾)
  3. [ 二 ] ( ホフ: ) 仏語。
    1. ( 「法」は仏陀の説いた真理。「律」は仏陀の制定した生活規定 ) 仏教を成立させる二つのもの。すなわち仏陀の教えと定めたきまり。
      1. [初出の実例]「願くは我、仏の法律を受け出家せむと思ふ」(出典:今昔物語集(1120頃か)一)
    2. 仏が制定した戒律。小乗戒や大乗戒などをいう。
      1. [初出の実例]「初心入道、法律未諳」(出典:正法眼蔵(1231‐53)出家)

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改訂新版 世界大百科事典 「法律」の意味・わかりやすい解説

法律 (ほうりつ)

実質的意義では,ひろく法(law(英語),Recht(ドイツ語),droit(フランス語))一般と同じ意味で用いられる。法律哲学・法律解釈学など,法律を〈法〉と置き換えても意味の異ならない場合などがこの用法である。形式的意義では,国会の議決を経て制定される国法の一形式たる法律(statute(英語),Gesetz(ドイツ語),loi(フランス語))をさし,各種の国家制定法のなかで中心的位置を占めており,日本国憲法その他の法令で法律という場合はほとんどこの狭義で用いられている。日本国憲法の下では,国会が〈国の唯一の立法機関〉(憲法41条)とされているので,立法は,憲法自体の定める例外的な場合を除き,原則として法律の形式によらねばならず,また,法律は,憲法に特別の規定がある場合を除き,法律案衆議院参議院の両院で可決されることによって成立する(59条)。法律の国内法上の形式的効力は,行政機関や裁判所の制定する命令や規則には優先するが,憲法の下位にあり,〈国の最高法規〉たる憲法の条規に反する法律は効力を有せず(98条),法律が憲法に適合するか否かを決定する権限は裁判所にある(81条)。同等の効力をもつ法律相互間では,〈後法は前法を廃する〉の原則によって,時間的に後に成立したほうが優先し,また,一般法と特別法との間(例えば民法労働法との関係など)では,〈特別法は一般法に優先する〉の原則によって,特別法が一般法に優先して適用され,一般法は特別法に規定のない関係にのみ補充的に適用される。
 →立法
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「法律」の意味・わかりやすい解説

法律
ほうりつ

広義には法と同じに用いられる。狭義には国民代表機関の議決を経て成立する法形式をさす。国民の意思の表れとして、民主主義的法治国家におけるもっとも重要な法形式である。大日本帝国憲法においては貴族院、衆議院の議決と天皇の裁可によって成立した。日本国憲法においては、衆参両院の議決だけで成立する(59条1項)。ただし衆議院で可決し、参議院でこれと異なった議決をした法律案は、衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再議したとき、法律となる(同2項)。成立した法律には主任国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署し(74条)、天皇が公布する(7条1号)。法律の効力は、憲法以下、政令、最高裁判所規則、条例以上であり、また条約以下とするのが通説である。憲法違反の法律については、最高裁判所の違憲立法審査権の対象となる。

[長尾龍一]

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普及版 字通 「法律」の読み・字形・画数・意味

【法律】ほう(はふ)りつ

法令。刑律。〔漢書、兒(げい)寛伝〕時に張湯、尉と爲り、尉の府に盡(ことごと)く法律のを用ふ。而して、儒生を以て其のに在り。

字通「法」の項目を見る

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百科事典マイペディア 「法律」の意味・わかりやすい解説

法律【ほうりつ】

と同義にも用いられるが,日本の成文法上は国会両院の議決で成立する法の形式をいう(憲法59条)。法律案の提案権は議員と内閣にある。衆議院で可決した法律案を参議院で否決した場合,および参議院が衆議院から法律案の送付を受け60日以内に議決しなかった場合は,衆議院で出席議員の3分の2以上の多数で再び可決すれば法律となる。天皇が公布する。最高裁判所が違憲と決定した法律は効力を有しない。→施行違憲立法審査権
→関連項目最高裁判所法令立法

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「法律」の意味・わかりやすい解説

法律
ほうりつ
Gesetz:law; loi

広く法一般をさす場合もあるが,重要なのは実質的意味と形式的意味の区別である。前者は,諸説分れるが,国民の権利義務に関する一般的法規範,すなわちいわゆる法規を意味するとされることが多い。後者は,近代諸国において議会によって制定され「法律」という名で公布される特定の国法形式を意味する。日本国憲法で法律という場合,多くは形式的意味で用いられている。前者は内容に着眼したものであり,後者は形式に着眼したものである。

法律
ほうりつ

「ノモイ」のページをご覧ください。

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とっさの日本語便利帳 「法律」の解説

法律

法と同義の用法もあるが、一般には国会の議決を経て制定される国法の一つで、憲法・条約・命令・規則等と区別され、憲法、条約に次ぐ形式的効力を持つ。現行有効な法律は二〇〇二年四月一日現在で一七六五件。

出典 (株)朝日新聞出版発行「とっさの日本語便利帳」とっさの日本語便利帳について 情報

世界大百科事典(旧版)内の法律の言及

【法則】より

…ヨーロッパの伝統のなかでは,その基盤が神にゆだねられていたことは,ヨーロッパ語で〈法則〉を表す語が,どれも受動態で〈(秩序正しく)置かれたもの〉という原義をもち,それゆえ,能動者としての神がその背後に前提されている事実からも明瞭である。ちなみに,日本語では人間を律する秩序としての〈法律〉と人間以外のものを律する秩序としての〈法則〉は区別されるが,ヨーロッパ語では通常この区別はない。 ヨーロッパの歴史のなかでは,神が被造物の世界に“置いた”秩序を追究することを通じて,人間は,神の計画や意志を知ろうとする,という構造が生じたことは見逃せない特徴である。…

※「法律」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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