改訂新版 世界大百科事典 「トゥバン」の意味・わかりやすい解説
トゥバン
Thuban
りゅう座のα星。この名は,〈竜〉の意のアラビア語に由来する。竜の尾に近い位置にあり,4等星であまり目だたない。しかし,この星は前2700年ごろの北極星であった。地球の歳差運動のため,天の北極はほぼ2万6000年を周期に天球上を移動する。トゥバンが北極星であったころは,エジプトで次々と大ピラミッドの建設が進められていた。ちなみに,クフ王のピラミッド内部には,墓室からトゥバンを見通す一直線の穴がうがたれている。また,当時この星はもっと明るく,2等星ほどであったとする説もある。中国名は右枢(ゆうすう)。概略位置は赤経14h04m,赤緯+64°23′。日本では周極星。実視等級は3.65等。A0型のスペクトルをもつ巨星で,距離は181光年。
執筆者:茨木 孝雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報