日本大百科全書(ニッポニカ) 「トガリエビス」の意味・わかりやすい解説
トガリエビス
とがりえびす / 尖恵比寿
sabre squirrelfish
[学] Sargocentron spiniferum
硬骨魚綱キンメダイ目イットウダイ科に属する海水魚。紀伊半島南部以南、小笠原(おがさわら)諸島、南シナ海、紅海、東部アフリカまでのインド洋、西太平洋、ハワイ諸島に広く分布する。体は側扁(そくへん)したタイ形で、硬くて粗雑な鱗(うろこ)で覆われる。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)の下端の角部に胸びれ基底に向かって伸びる強大な棘(とげ)があること、臀(しり)びれの軟条が10本以下であることなどでイットウダイ亜科に属し、アカマツカサ亜科と区別できる。背びれ棘(きょく)は後方に向かってだんだん短くなること、背びれ棘部と側線の間に3.5枚の鱗があること、主鰓蓋骨棘は2本であることなどで他種と容易に区別できる。体色は美しい赤色で、各鱗の縁辺は銀白色。目の後方に縦長の大きな暗赤色の斑紋(はんもん)がある。背びれの棘部は一様に暗赤色。胸びれの腋部(えきぶ)とその上方部は暗赤色。サンゴ礁・岩礁域の水深10~30メートルにすみ、日中は洞穴にいる。夜行性で、おもに小形甲殻類を食べるが、小形魚類も食べる。最大体長は約50センチメートルになるが、普通は30センチメートルほどである。延縄(はえなわ)、籠(かご)、銛(もり)などでとり、塩焼き、煮つけなどで食用とするが、シガテラ毒の発症の報告があるので注意する必要がある。水族館で飼育される。
[尼岡邦夫 2016年10月19日]