日本大百科全書(ニッポニカ) 「トラガカントゴム」の意味・わかりやすい解説
トラガカントゴム
とらがかんとごむ
tragacanth gum
植物ゴム質の一種。イラン、シリア、トルコなどの半砂漠地方に産するマメ科(APG分類:マメ科)アストラガルス属の低木トラガカントゴムノキAstragalus gummiferの幹に傷をつけて分泌する粘質物を乾燥した樹脂状物質。トラガントゴム、トラガカントともよばれる。市販品は白色ないし帯黄色の粉末か屈曲したリボンのような角状物。トラガカントゴムの大部分(60~70%)は、水に分散するのみで溶解しないバソリンとよばれる中性多糖類で、ついでトラガカンチンとよばれる水溶性酸性多糖類および少量のデンプン、セルロース、タンパク質を含む。トラガカンチンの主成分はトラガカント酸とよばれる多糖類であり、D-ガラクツロン酸43%とD-キシロース40%などからなる。水を加えると徐々に吸水し、膨潤・分散して透明で粘稠(ねんちゅう)な液になる。化粧品、食品、医薬品などの分野で、増粘剤、乳化剤、乳濁液の安定剤、薬用ゼリー、緩下剤として使用される。
[福田和吉 2019年10月18日]