日本大百科全書(ニッポニカ) 「トラハテンベルグ」の意味・わかりやすい解説
トラハテンベルグ
とらはてんべるぐ
Иосиф Адольфович Трахтенберг/Iosif Adol'fovich Trahtenberg
(1883―1960)
ウクライナ(メリトポリ市)出身のソ連の経済学者。1903年ロシア社会民主労働党に入り、ボリシェビキに属したが、07年脱党した。12年トムスク大学を卒業、17年ハリコフ大学経済学教授になる。革命後党に復帰、最高国民経済会議やゴスプラン、中央統計局の責任者として働いた。貨幣論学者としては『紙幣論』(1918)の研究で名をあげ、『現代の信用および信用組織――信用理論』(1928)や『第二次世界戦争後における資本主義の信用・貨幣制度』(1954)を著している。1931年からはアカデミー付属の世界経済世界政治研究所、経済研究所、世界経済国際関係研究所にあって貨幣・信用恐慌の理論と歴史を研究、その成果は『世界経済恐慌史』第3巻『貨幣恐慌、1821―1938年』(1939)の大著および『資本主義的再生産と経済恐慌』(1947)にまとめられている。その理論は第二次世界大戦前にもブレゲリなどによりマルクス主義信用理論の歪曲(わいきょく)として批判を受けたが、スターリン主義が猖獗(しょうけつ)を極めた戦後の時期にはバルガ、メンデリソンらとともに政治主義的非難を浴びた。1939年以降アカデミー正会員。
[名和献三]
『飯田貫一訳『再生産と恐慌』(1957・青木書店)』▽『及川朝雄訳『貨幣恐慌史』全3巻(1967~68・岩崎学術出版社)』