日本大百科全書(ニッポニカ) 「トロア条約」の意味・わかりやすい解説
トロア条約
とろあじょうやく
百年戦争の後期、1420年5月にイギリス王ヘンリー5世がフランス王シャルル6世(実際には王妃イザボーIsabeau de Bavière(1371―1435)とブルゴーニュ公フィリップ)とフランスのトロアTroyesにおいて締結した講和条約。これにより、フランス王太子は王位継承権を失い、フランス王国を婚資とする王女カトリーヌCatherine of Valois(1401―1437)とヘンリー5世の結婚が取り決められた。これは、両者の間に生まれた王子が英仏両国の王位を兼ねる二重王国の実現を意図したものである。なお、この場合両国は固有の諸制度を引き続き保持するとされた。その後、ヘンリー5世とシャルル6世が相次いで死に(1422年8月と10月)、新王ヘンリー6世が戴冠(たいかん)して二重王国実現の条件は整ったものの、イギリス王の支配領域はフランスの一部にすぎず、やがてジャンヌ・ダルクの活躍でシャルル7世が王位についた(1429)ため、この条約は死文化するに至った。
[松垣 裕 2023年1月19日]