日本大百科全書(ニッポニカ) 「ウンブリア派」の意味・わかりやすい解説
ウンブリア派
うんぶりあは
イタリア中部のウンブリア地方に、主として15世紀後半に栄えた画派。ウンブリア絵画は、14世紀にはフィレンツェやマルケ地方の影響も受けたが、おもにシエナ派の支配下にあった。その素地のうえに、15世紀にフィレンツェで誕生した新しい絵画の影響が及び、独自の画派が生まれる。たとえば1430年代後半以降、ドメニコ・ベネチアーノ、フラ・アンジェリコ、ベノッツォ・ゴッツォーリらがウンブリア各地で制作し、60年を過ぎると、ピエロ・デッラ・フランチェスカやフィリッポ・リッピがペルージアやスポレートで重要な作品を描いた。こうした活動に触発されて、ペルージアとフォリーニョを中心に地元の優れた画家が育つ。ベネデット・ボンフィーリやフィオレンツォ・ディ・ロレンツォ、マッテオ・ダ・グアルドらがそれである。そのなかでもっとも名高く、ウンブリア派の象徴のようになっているのがペルジーノである。彼は、ウンブリア人が伝統的にもっている敬虔(けいけん)な宗教心を反映した、穏やかな自然と甘美な人物を合理的に配した独特の宗教画で15世紀末に広い人気を博した。そしてペルージアとフィレンツェに大工房を構え、その活動はウンブリアの境界を越えていた。弟子にはウルビーノ出身のラファエッロ、ペルージア生まれのピントリッキョがいる。
このほかウンブリア派には、ロ・スパーニョとして知られるジョバンニ・ディ・ピエトロやエウゼビオ・ディ・サン・ジョルジョ、あるいはパストーラ(アントニオ・マッサーリ)らがおり、ペルジーノやラファエッロ、あるいはピントリッキョらの作風に倣った作品を残している。しかし、盛期ルネサンスの巨匠たちの影響のもとに、ウンブリア派はその独自性を失っていった。
[石鍋真澄]