改訂新版 世界大百科事典 「トーロップ」の意味・わかりやすい解説
トーロップ
Jan Toorop
生没年:1858-1928
オランダの画家。正式名はヨハネス・テオドールJohannes Theodoor T.。ジャワ島の生れでイギリス,オランダ,ジャワの血をひく。アムステルダム,ブリュッセルの両アカデミーで学び,印象主義的画風から出発する。1885年に〈レ・バン(二十人組)〉の一員となって以後は,ベルギーの象徴主義的画家や文学者との交流を深める一方,数度のイギリス滞在を通じてラファエル前派やブレークの影響を消化してオランダにおける象徴主義絵画の礎を築いた。しかし彼の本領がもっとも発揮されたのは素描および挿絵の分野である。流麗な曲線の駆使と細長く歪曲化された人体表現を特徴とする,90年代前半の一連の個性的な挿絵は,いずれも深い象徴的意味を備えたものであり,同時にその平面的・装飾的構成によってアール・ヌーボーへの道を開いている。95年のカトリック改宗後は,友人たちの肖像を除いてはもっぱら宗教的題材を扱ったが,これらにはかつての才気は感じられない。
執筆者:高橋 達史
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報