日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドイツゴイ」の意味・わかりやすい解説
ドイツゴイ
どいつごい / 独逸鯉
German carp
[学] Cyprinus carpio
硬骨魚綱コイ目コイ科のコイの変種で、鱗(うろこ)の少ないコイの総称。大形の鱗が側線に沿って1列と、背びれの基部に1列あるラインゴイline carp、背びれの基部と尾柄(びへい)の一部にだけ大形の鱗があるカガミゴイ(鏡鯉)および鱗がほとんどないカワゴイ(革鯉)とがある。これらのうち、カガミゴイは成長や生残率がもっとも高く、同系交配をするとすべてこのタイプのものが出る。しかし、カワゴイとラインゴイは鱗が普通にあるコイ(ウロコゴイ)よりも成長や生残率が低い。とくにカワゴイの同型接合体(ホモサイゴートhomozygote)は、致死性のために実在するものは非常に少ない。1782年にオーストリアでカワゴイが発表されたのが最初の記録である。日本には、1904年(明治37)にドイツのアイシュ川沿い地方産のカワゴイ雌4尾とカガミゴイ雄1尾が初めて移入され、ドイツゴイの名はこれに由来している。その後、日本のコイとの雑種が各地に広まり、現在でも食用ゴイやニシキゴイのなかに、これら三つのタイプがみられる。ヨーロッパでは、鱗の少ないコイは料理しやすいので評判がよく、成長の速いカガミゴイが広く養殖の対象にされている。日本では、食用としてのドイツゴイは好まれないが、ニシキゴイの「秋水(しゅうすい)」や「ドイツ紅白」などの品種は、ラインゴイがとくによいとされている。1968年(昭和43)に旧西ドイツから、体高が高く、しかも成長の速いカガミゴイが再度移入された。このコイと日本産養殖種のヤマトゴイとの雑種であるヤマトカガミとよばれるものは、両親の種類よりも品質がよく、新しい食用ゴイとして推奨されている。
[鈴木 亮]