ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドハティ」の意味・わかりやすい解説
ドハティ
Doherty, Peter C.
アメリカ在住の医学者。 1966年クイーンズランド大学卒業。 70年エディンバラ大学で博士号を取得。オーストラリア国立大学教授などを経たのち,88年からアメリカ・テネシー州メンフィスのセントジュード小児研究病院免疫学部長。 1973~75年オーストラリアのキャンベラにあるジョン・カーティン医科大学で,R.M.ツィンカーナーゲルと共同で,マウスに髄膜炎を感染させ免疫系である白血球の1種Tリンパ球 (キラーT細胞) がウイルス感染細胞を殺す仕組みについての実験を行なった。その結果キラーT細胞の主要組織適合抗原 (MHC) とウイルス感染細胞の MHCが同じである場合にのみキラーT細胞の免疫作用が働くことを発見,74年雑誌『ネイチャー』に発表した。細胞における「自己」と「非自己」の識別作用の発見は感染症に対するワクチンの設計,リウマチや糖尿病など慢性病の研究に大きく貢献したが,その業績が真に評価されるまで 20年かかった。 95年ツィンカーナーゲルとともにラスカー賞,さらに 96年ノーベル生理学・医学賞を受賞。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報