ネイチャー(読み)ねいちゃー(英語表記)Nature

翻訳|Nature

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ネイチャー」の意味・わかりやすい解説

ネイチャー
ねいちゃー
Nature

イギリスの総合科学誌。『サイエンス』誌と並び、世界を代表する。ネイチャー・パブリッシング・グループ(NPG:Nature Publishing Group)が発行、編集部はロンドン。1869年に、イギリスの宇宙物理学者のロッキャーらが創刊した。初代編集長のロッキャーは50年間の長きにわたって同誌の発展に寄与した。「教養ある人の科学的論議の場」というミッションをもち、X線の発見(1896)を始め、DNAの二重螺旋(らせん)構造の解明(1953)、エイズの存在(1983)、オゾンホールの発見(1985)、ヒトゲノム解読(2001)など、科学の歴史を刻む画期的な発見、発明を伝える論文が多く掲載された。ノーベル賞を受賞した執筆者がもっとも多い科学誌でもある。

 1論文当りの平均引用件数、論文の影響力を示す指標である「インパクトファクター」は42.351(アメリカのトムソン・ロイター社発表)であり、総合科学誌として世界1位(2013)。2013年12月時点のプリント版(年間51号)の発行部数は5万0322部、推定読者は42万人。オンライン版の月間読者は260万人。扱う分野はほぼ科学全般にわたる。同誌に掲載されることは世界の研究者の最高のステータスの一つであり、膨大な論文が投稿される。編集者による振り分けを経て、論文1本につき3人の専門家によって査読され、最終的には編集長の判断で掲載の可否が決定される。掲載率は約8%しかない。ネイチャーは1973年に本誌のほか、『ネイチャー・ニュー・バイオロジー』『ネイチャー・フィジカル・サイエンス』が創刊された。以後、姉妹誌は、『気候変動』『地球科学』など分野ごとに増え続け、現在100を超える。商業主義に走り過ぎるとの批判もある。2014年1月にはSTAP(スタップ)細胞論文が掲載され世界の注目を集めたが、論文不正が指摘され、同年7月に撤回された。

 NPGの親会社マクミラン社の日本法人「ネイチャー・ジャパン」は1987年に設立された。

玉村 治 2015年6月17日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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