日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドミートリエフ」の意味・わかりやすい解説
ドミートリエフ
どみーとりえふ
Иван Иванович Дмитриев/Ivan Ivanovich Dmitriev
(1760―1837)
ロシアの詩人。田舎(いなか)地主の家に生まれ、一兵卒として軍隊に入った。勤務のかたわら、詩人のデルジャービン、ついでカラムジンの知遇を得て詩作を行った。とりわけカラムジンの影響を強く受け、『オスマン・トルコとの講和をたたえて』(1792)、『愛国者の声』(1794)などの頌詩(しょうし)には主情主義(センチメンタリズム)の色彩が濃い。1796年パーベル1世の即位に際して皇帝(ツァーリ)暗殺を企てたとして逮捕されたが、無罪判決後はかえって元老院局長、司法大臣などの高官に登用された。民話や寓話(ぐうわ)詩の形式で風刺的な作品や、広く流行した叙情的歌謡も書いた。
[中村喜和]