日本大百科全書(ニッポニカ) 「センチメンタリズム」の意味・わかりやすい解説
センチメンタリズム
せんちめんたりずむ
sentimentalism
一般に「感傷主義」と訳され、「お涙頂戴(ちょうだい)」「子女の紅涙を絞る」式の感傷癖に用いられるが、本来は「多感」「風流」などの意味。イギリス17世紀末流行の「感傷喜劇」comedy of sentimentは、道徳感情に訴えて観客の涙を絞る劇構成であった。18世紀前期その反動として主知主義、古典主義が流行したが、同世紀中期にはふたたび人間の感性を重んじる傾向が現れる。その中心的存在がローレンス・スターンで、紀行文『センチメンタル・ジャーニー』によって、センチメントの意味を「洗練された感受性」にまで高めた。この作品は大陸に大きな影響を与え、ドイツ語にempfindsam、フランス語にsentimentalという新語を加え、やがてフロベールに『感情教育』を書かせるまでに至った。
[船戸英夫]