なのりそ

精選版 日本国語大辞典 「なのりそ」の意味・読み・例文・類語

な‐のり‐そ

  1. 〘 名詞 〙 海藻ほんだわら」の古名。《 季語・夏/新年 》
    1. [初出の実例]「海(わた)の底 沖つ玉藻の 名乗曾(なのりソ)の花 妹と吾れと ここにありと 莫語(なのりそ)の花」(出典万葉集(8C後)七・一二九〇)
    2. [その他の文献]〔俳諧・をだまき(元祿四年本)(1691)〕

なのりその補助注記

( 1 )古くから食用とされたが、歌では、「な告りそ」という意をかけて用いられる。歌の興趣における表現であることは、挙例の「万葉集」のように、実際には存在しない「なのりその花」が詠まれた例からもわかる。なお、「なのりその花」は、「なのりそ」に付いた米粒状の気泡を花と見立てたもの。
( 2 )正倉院文書」に「なのそ」の形が多く見られ、これを「なのりそ」の「り」が促音化したものと考える説がある。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「なのりそ」の意味・わかりやすい解説

ナノリソ
なのりそ / 奈能利曽
莫告藻

褐藻植物であるホンダワラ類の古称。『万葉集』巻三には「みさご居(い)る 磯廻(いそみ)に生(お)ふる なのりその 名を告(の)らしてよ 親は知るとも」の歌がみえるが、この「なのりそ(莫告藻)」とはホンダラワ類とされる。なお、『日本書紀』では「浜藻をなづけて、奈能利曽毛(なのりそも)といへり」(巻13・允恭(いんぎょう))とあるため、ホンダワラ類をさす以前は、広く浜藻を意味していたと思われる。やがて江戸時代になると、穂俵(ほだわら)に通ずる呼び名であるホンダワラが普及し、ナノリソは死語的になったと思われる。なお、分類学的にナノリソという場合はホンダワラ属の一種Sargassum turneri Yendoをさす。本種は日本海沿岸に産するが、あまり普遍的な海藻ではない。

[新崎盛敏]

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