にせ札(読み)にせさつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「にせ札」の意味・わかりやすい解説

にせ札
にせさつ

偽造変造された紙幣・銀行券。通貨を発行する権限のない者が、行使の目的をもって、通用している通貨を偽造・変造したときは、通貨偽造罪として無期または3年以上の懲役に処せられる。通貨の真正に対する公共の信用は社会の重要な利益であり、にせ札によって通貨の信用が失われたならば、流通取引が著しく阻害され、大きな社会的混乱を招くことから、通貨偽造罪に対してはきわめて重い刑罰が定められている。印刷技術や電子複写技術の進歩に伴い、にせ札もきわめて精巧なものが現れているが、こうしたことを防止するため、日本銀行券については、過去数回にわたり、ホログラムや「すかし」を入れたり、特殊インキを採用するなどの措置がとられている。

 にせ札は、偽造されたものと変造されたものとに分けられる。偽造とは、描画、複写、印刷などの方法により、一般通常人が真正な通貨と誤認するおそれのある程度のものを作成することをいう。変造とは、真正な通貨を加工して、通貨の外観を有するものを作成することで、真券の表面と裏面剥離(はくり)して白紙を裏打ちしたものや、真券を切断して他の切断真券とを貼(は)り合わせたものなどがある。国内における近年の大掛りなにせ札事件としては、1982年(昭和57)大分県警がにせ5000円札7万6201枚を押収、印刷会社社長ら9人を検挙した例がある。

[中島勝利]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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