通貨偽造罪(読み)ツウカギゾウザイ

デジタル大辞泉 「通貨偽造罪」の意味・読み・例文・類語

つうかぎぞう‐ざい〔ツウクワギザウ‐〕【通貨偽造罪】

通貨偽造及び行使等罪

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精選版 日本国語大辞典 「通貨偽造罪」の意味・読み・例文・類語

つうかぎぞう‐ざいツウクヮギザウ‥【通貨偽造罪】

  1. 〘 名詞 〙 通貨偽造変造したり、また、その通貨を行使交付・輸入することによって成立する罪。刑法第一四八~一五三条に規定。

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改訂新版 世界大百科事典 「通貨偽造罪」の意味・わかりやすい解説

通貨偽造罪 (つうかぎぞうざい)

狭義には,行使の目的,すなわち偽貨を真貨として流通に置く目的で,貨幣法,臨時通貨法,日本銀行法により強制通用力を認められた日本の貨幣,紙幣,銀行券および国内で現に通用する外国政府ないしその承認機関発行の貨幣,紙幣,銀行券を偽造,変造する罪をいう。刑は,日本の通貨の場合無期または3年以上の懲役(刑法148条1項),外国通貨の場合2年以上の有期懲役(149条1項)。

 広義には以下の罪等も含む。(1)偽造通貨行使,交付,輸入罪 偽造,変造された通貨を行使し,または,行使の目的でこれを人に交付もしくは輸入する罪で,刑は,日本の通貨の場合無期または3年以上の懲役(148条2項),外国通貨の場合2年以上の有期懲役(149条2項)。なお,輸入および輸入予備,未遂については,関税定率法21条1項3号,関税法109条も,5年以下の懲役もしくは50万円以下の罰金,または両者の併科を定める。(2)偽造通貨収得罪 行使の目的で日本および外国の偽造,変造通貨を収得する罪で,刑は3年以下の懲役(刑法150条)。(3)偽造通貨収得後知情行使,交付罪 通貨収得後その偽造,変造にかかることを知ったにもかかわらず行使し,または行使の目的で人に交付する罪で,刑は名価の3倍以下の罰金または科料であるが,2000円以下に下しえない(152条)。

 狭義の通貨偽造罪のほか,偽造通貨行使罪,偽造通貨収得罪は未遂も処罰され(151条),さらに,狭義の通貨偽造罪の予備のうち,器械,原料の準備という特定の形態のものは,独立の罪として,3ヵ月以上5年以下の懲役に処せられる。なお,日本の通貨の偽造,変造罪および同行使等の罪ならびにそれらの未遂は,内外国人を問わず,国外犯も処罰される(2条4号)。外国で流通する外国通貨の偽造,変造等については,〈外国ニ於テ流通スル貨幣紙幣銀行券証券偽造変造及模造ニ関スル法律〉があり,国外犯も処罰される。

 偽造とは,通貨発行権のない者が,一般人に真正の通貨と誤認させるに足る外観をもつ物を作出することである。その程度に達しない場合は模造と呼ばれ,日本の通貨については〈通貨及証券模造取締法〉(1895公布)の適用を受け,国外犯も処罰される。変造とは,既存の真正な通貨に加工して,別個の,真正の通貨と紛らわしい外観を呈するものを作出することである。紙幣の表裏をはがして裏打ちする,あるいは,切断して一部を通常の紙片と入れかえるなどしたものを折りたたんで,折りたたまれた真正の通貨のように見せかけて使用しうるものをつくること等が,その例である。行使とは,真正な通貨のように見せかけて流通過程に置くことであり,見せ金としての使用は含まないが,人に示す必要はなく,偽貨の公衆電話,自動販売機への投入はこれにあたると一般に解されている。輸入とは,領土,領海内への搬入をいうが,海上輸入の既遂の場合に揚陸を要するという見解も有力である。

 通貨偽造罪は,昔は世界的に国家(君主)の通貨高権に対する罪としてとらえられ,その国家犯罪ないし反逆罪的性格から,火あぶりなどの重刑をもって臨まれていた。日本の1873年の改定律例249条でも,首魁は斬(うちくび)とされていた。現在では,おもに経済取引秩序の安全に対する罪としてとらえられているが,通貨の国内および国外取引手段としての基本的性格,したがってそれに対する公共の信用の喪失が招く重大な事態にかんがみ,なお相当重くかつ広範に処罰されるのが通例である。
贋金
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「通貨偽造罪」の意味・わかりやすい解説

通貨偽造罪
つうかぎぞうざい

通貨に対する公共の信用を害する罪(刑法148条~153条)。通貨の偽造は取引の安全を害し、貨幣経済を混乱に陥れるから、どこの国でも重く処罰される。「通貨」とは日本国内で強制通用力を有する貨幣、紙幣、銀行券をいい、古銭や廃銭はこれに含まれない(ただし、国内で事実上使用されている外国の通貨が本罪の客体とされる場合がある)。本罪には、通貨を行使の目的で偽造・変造したり、偽造・変造した通貨を行使・交付・輸入する場合(無期または3年以上の懲役)のほか、行使の目的で偽造・変造の通貨を収得する場合(3年以下の懲役)、偽造・変造の通貨を収得後このことを知りながら行使・交付する場合(その額面の3倍以下の罰金または科料。ただし2000円以下にすることはできない)、通貨の偽造・変造の目的で器械や原料を準備する場合(3月以上5年以下の懲役)がある。なお、外国の通貨に関しては、行使の目的で偽造・変造したり、偽造・変造の通貨を行使・交付・輸入する場合に限り処罰される(2年以上の有期懲役)。

[名和鐵郎]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「通貨偽造罪」の意味・わかりやすい解説

通貨偽造罪
つうかぎぞうざい
Geldfä lschung

貨幣や銀行券などの通貨を偽造・変造し,または行使することによって成立する犯罪 (刑法 148~153) 。通貨の社会的信用性を保護し,通貨を手段として行われる取引の安全を守るため処罰の対象とされる。今日の経済的秩序は通貨に対する公共の信用を確保することなくしては維持できないので,刑法は通貨偽造行為に対し無期懲役を含む重い刑でのぞむとともに,通貨の偽造・変造,偽貨の行使・交付・輸入およびそれらの未遂だけでなく,行使目的に出た偽造・変造通貨の収得やその未遂,さらには通貨偽造の準備行為にいたるまで広く処罰の対象としている。文書偽造罪有価証券偽造罪と比べて刑は重く,また処罰の対象となる行為の範囲も広い。

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百科事典マイペディア 「通貨偽造罪」の意味・わかりやすい解説

通貨偽造罪【つうかぎぞうざい】

行使の目的で,強制通用力をもつ貨幣・紙幣または銀行券を偽造または変造する罪で,刑は無期または3年以上の懲役(刑法148条以下)。この狭義の通貨偽造罪のほか外国通貨偽造,これらの未遂および器械または原料を準備する行為も罰する。また偽造通貨の行使,行使の目的での収得およびこれらの未遂,収得した後偽造または変造であることを知って行使または行使の目的で交付する行為も罰する。
→関連項目偽造罪予備(法律)

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