押収(読み)おうしゅう(英語表記)seizure

翻訳|seizure

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

押収
おうしゅう
seizure

刑事手続上,裁判所執行する,証拠物または没収対象物に対する強制的占有取得処分をいう。差押え提出命令領置の別がある。の権限は原則として裁判所に属するが,捜査手続においては裁判官の令状に基づき捜査機関がなすこともできる (刑事訴訟法 218,220,221) 。強制的処分たる押収に対しては,公務上,業務上の秘密保持のため,押収拒否権が認められる場合がある (103,105条) 。押収物件は裁判所が保管,留置する。留置の必要のないものは,裁判所の決定により還付される。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

百科事典マイペディアの解説

押収【おうしゅう】

裁判所が証拠物または没収の対象物と考える物について,これを保全するために,その占有を取得する裁判およびその執行をいう(刑事訴訟法99条以下)。差押えと提出命令と領置を含む。押収できる物については一定の制限がある。憲法35条によれば,押収するためには令状が必要とされる。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版の解説

おうしゅう【押収】

刑事事件,少年保護事件等において,証拠物や没収すべき物の占有を官憲が取得する処分。裁判所あるいは捜査機関によってなされる。強制的に占有を取得する場合を差押え,遺留物や任意に提出された物に対する場合を領置と呼ぶ。提出命令という方法もある。押収,とりわけ差押えについては,目的物を明示した司法官憲(裁判官)の発する令状が必要とされる(憲法35条。令状主義)。このことは捜査機関による差押えの場合に重要な意味をもつが,逮捕の際にその現場で差押えをするには令状を要しない(同条)。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

大辞林 第三版の解説

おうしゅう【押収】

( 名 ) スル
裁判所や捜査機関が証拠物や没収すべき物を占有・確保すること。差し押さえ・提出命令・領置の三種がある。 「証拠物件を-する」

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

押収
おうしゅう

裁判所または捜査機関が、証拠物または没収すべき物の占有を取得する処分のことをいう。押収には、差押えと領置と提出命令が含まれる(刑事訴訟法99条)。差押えと領置は、裁判所が行う場合と捜査機関が行う場合とがあり、提出命令は裁判所にのみ認められている。差押えとは、物の占有を強制的に取得する処分であり(同法99条1項、218条1項、220条1項、222条1項)、物の移転がつねに伴うとは限らない(たとえば、建物の差押え)。領置とは、遺留物や任意提出物の占有を取得する処分である(同法101条、221条、222条1項)。提出命令とは、差押えの対象となる物を指定し、所有者、所持者または保管者にその物の提出を命ずる裁判である(同法99条2項、100条1項・2項)。なお、公務上の秘密あるいは一定の業務上の秘密に関するものについては、刑事訴訟における真実発見の利益を上回る利益がありうるので、押収拒絶権が認められている(同法103条~105条)。
 憲法第35条は、押収する物を明示する令状を要求して、令状主義を定めている。これを受けて法律は、捜査機関は、裁判官の発する令状により差押えをすることができるとしている(刑事訴訟法218条1項)。裁判所が法廷外で差押えをする場合にも、差押状を発してこれを行うこととしている(同法106条)。押収手続に違法があった場合の押収物の証拠能力につき、判例は、以前は、押収手続に違法があったとしても物自体の性質、形状に変異をきたすはずはないから証拠の価値に変わりはないとしてその証拠能力を認めていた。しかし、1978年(昭和53)9月7日の最高裁第一小法廷判決は、捜索差押許可状なくして覚せい剤等を押収した事案に関して、押収手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、そのような違法手続によって得られた証拠物を証拠として許容することは、将来における違法な捜査を抑制するという見地からして相当でないと認められる場合においては、その証拠能力は否定されるものと解すべきである、とした。この違法収集証拠の排除法則は、今日、日本の実務に定着するに至っている。[田口守一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典の解説

おう‐しゅう アフシウ【押収】

〘名〙 裁判所や捜査機関などが、証拠物または没収すべき物を占有、確保しておくための処分。差押え、領置、提出命令の三種がある。捜査機関が差押えをするときは、裁判官の令状が必要である。
※火の柱(1904)〈木下尚江〉序に代ふ「警吏は令状を携へて平民社を叩けり、厳達して曰く『嗚呼(ああ)増税』の一文、社会の秩序を壊乱するものあり依て之を押収(アフシウ)すと」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

人望

信頼できる人物として、人々から慕い仰がれること。「人望を集める」「人望を失う」...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

押収の関連情報