日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニフルヘイム」の意味・わかりやすい解説
ニフルヘイム
にふるへいむ
Niflheimr
北欧神話に現れる氷と霧の世界。『エッダ』のニフルヘルと同一視される。この世の初めに、天も地も海もなく、ただ奈落(ならく)の口だけがあったとき、その北側にニフルヘイム、南側に灼熱(しゃくねつ)の世界ムスペルスヘイムがあった。ニフルヘイムから流れ出る毒の川エーリバーガルは凍って霜となり、これに灼熱の世界からきた熱風がぶつかって滴となり、これから巨人の祖イミルが生まれた。ニフルヘイムは重い氷と霜で覆われ、中には靄(もや)が立ちこめ、突風が吹いている。また世界のいちばん下の国で女神ヘルが住み、死者たちが死後に行く所とされた。主神オーディンはわが子バルドルの運命を巫女(みこ)から知るため、自らそこに赴いたという。
[谷口幸男]