イグドラシル(読み)いぐどらしる(英語表記)Yggdrasill

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イグドラシル」の意味・わかりやすい解説

イグドラシル
Yggdrasill

北欧神話に出てくる世界樹。巨大なとねりこの木で,神々の世界アスガルズを載せ全宇宙を貫いてそびえている。全世界の運命がこの木にかかっているという。3本の太い根をもち,1本は神界に,1本は巨人の国ヨツンヘイムに,もう1本は死人の国ニフルヘイムに伸びている。3本の根はおのおの異なった泉により養われ,そのうちの一つウルズの泉はノルンという女神に守られその泉の水をイグドラシルに毎日注ぐ。ニズヘグという毒竜が木の根を毎日かじっているので,世界樹が枯れて神々と人間の世界が滅びるのを防ぐためだという。また,神々は毎日この泉のほとりで会合を開く。木の頂上には金鶏,最も高い枝レラズの上には1羽のわしがおり,わしの目の間には1羽のたか止まり,りすのラタトスクがこの木を上下してわしとニズヘグとの間に不和を起しているという。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イグドラシル」の意味・わかりやすい解説

イグドラシル
いぐどらしる
Yggdrasill

北欧神話に現れるトネリコ大樹。あらゆる樹(き)のうちでもっとも大きく、ウルドの泉の上にそびえて全世界の上に枝を広げる。神々は毎日このイグドラシルのもとで協議し、裁きの判決を下す。これを支える巨大な三つの根は冥府(めいふ)のヘル、霜の巨人の国、人間界へと届き、そのそばにはそれぞれ泉が一つずつある。またその根を蛇と竜が、また若い枝を4頭の牡鹿(おすじか)が絶えず食い荒らしており、枝には物知りの鷲(わし)が止まっている。そのことばはリスにより根の竜に伝えられる。世界の終末にはこの樹は震え、巨人スルトの火で焼かれる。イグドラシルは、北欧の詩人たちがさまざまなイメージからつくりあげたものと思われ、このような宇宙樹の観念オリエント中世のヨーロッパ大陸にもみられる。

[谷口幸男]

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