日本大百科全書(ニッポニカ) 「ニルスのふしぎな旅」の意味・わかりやすい解説
ニルスのふしぎな旅
にるすのふしぎなたび
Nils Holgerssons underbara resa
スウェーデンの女流作家ラーゲルレーブの長編童話(1906~07)。スウェーデン南端のスコーネ州の少年ニルスは、度を越したいたずらのため魔法の力で小人に変えられ、鵞鳥(がちょう)の背に乗ってスウェーデン全土の空を飛び回る。動物との触れ合いに始まり、地理、歴史、産業、地方にまつわる伝説、スカンセンの野外博物館まで組み込む7か月余の旅をするうちに、ニルスは責任感あるたくましい少年に成長する。教育協会の依頼で、次代を担う児童に自国の理解と国民的自覚をもたせる意図で書かれた。小学校上級用教科書として用いられているが、児童文学の傑作として、世界中に読者をもつ。日本でも『飛行一寸法師』(1918)以来各種の翻訳で親しまれている。動物との触れ合いに少年の人間的成長をみる着想は、キップリング『ジャングル・ブック』から得たものといわれる。
[田中三千夫]
『矢崎源九郎訳『ニールスのふしぎな旅』上下(岩波少年文庫)』